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とにかく話題になればいい、ということなんだろうか。
「やっちゃえ日産」のTVCFは、まず永ちゃんを持ってきてヤンチャぶりをアピールして見せた。
これ、人選はなかなかいいところをついたと思う。ベテランの歌手ではあるけど、結構幅広い年齢層に支持を得ているし、以前からの日産党あたりには、もうド真ん中にガツンと来そうじゃないか。
実際、ネットを中心に結構な話題になっていて、ニュースやコラムのネタになっているようだし、周囲のクルマ好きもかなり盛り上がっている向きがある。何かこう、血が騒ぐというか、一種の高揚感をもたらすみたいで。
けれども、じゃあ何を「やっちゃう」のかを考えてみると、話は急激に怪しくなるんである。
永ちゃんが体を張って?披露する自動運転技術は、もちろんいまや日産独自の技術じゃないし、リーフ=EVは日産自らがHVへ急遽シフトしているように、商品としては行き詰まった感じだ。
続く「まっさん」のシャーロット・ケイト・フォックス版のNV200は、ニューヨークでタクシーに採用されたとはいえ、日本市場云々の話とはあまり気持ち的にもリンクしない。
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そもそも、何でリーフだのNV200だの微妙なところを持って来るのかといえば、もちろん現行ラインナップが壊滅的に魅力を欠いているからだろう。ここ数年の売れ筋と言えばノートとセレナ、そして軽くらいだ。いまさらそのあたりを持ってきても当然「やっちゃえ」にならないんである。
ご存知のとおり、お得意のグローバル展開を進めた結果、自国の登録車シェアは気が付けば10%程度まで落ち込み、いまやホンダは遥か彼方だ。こいつは何とかしなくちゃいかんとうのが今回のTVCFの契機だろう。
けれども、永ちゃんが渋く「やるヤツか、やらないヤツか」と問うたところで、実際のラインナップのほとんどは「やらないヤツ」ばっかり。渋ければ渋いほど虚しさが募る。
この乖離が実に悲しいところなんだけど、逆に言えば実態がないからこそ「やっちゃえ」なんていうイメージで攻めるしかないんだろう。だから日産としては、この仕掛けに反応してくれるメディアやユーザーが少しでもあれば、もう儲けモノなんである。
ちなみに、トヨタもまたドラえもんだのTOYOTOWNだのイメージ戦略が目立つけれど、こちらは商売をキッチリやったうえでの上乗せ戦略であるところが大きく違う。国内市場を見据えた商品を確実に売ったうえで、さらに薄く広く市場拡大を狙うと。
実態を伴うか否かでその差はあまりに大きいわけで、だから日産の方は何となくウケればいいやと思っているのかもしれない。であれば、その目的はそこそこ達成しているとも言えるんである。
(15/10/19 すぎもとたかよし)
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