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やっぱり、数撃ちゃ当たるってことの証なんだろうか?
あまりに派手だと賛否両論のエクステリアは、個人的に悪い印象はない。というか、明快なテーマを持った造形は、当初、初代のヴィッツファミリー同様、ヨーロッパスタジオの作かと思ったくらいなんである。
周知のとおり、トレッキングシューズをモチーフにした発想は、しかしトヨタ東日本の若手デザイナーによるそうで、こういう才能がポッと出てくるあたりは裾野の広いトヨタならではかもしれない。
派手だという批判の対象である一筆書き風モールも、光りものをほとんど使わず、ボディ全体を“ブラックで締める”という役割を兼ねているし、それも含めて全体的にカジュアルな質感を出しているとも思う。最近のトヨタは、欧州版のヴィッツやアイゴを筆頭に、ランプ周りのグラフィックをやたらと引き伸ばす傾向があるけれど、今回はそれ関係じゃないみたいだけど。
細かいことを言えば、当初写真ではこのモール部分が艶消しのゴム素材を思わせたところ、実際にはフツーの樹脂素材であったのは若干安っぽい感じで惜しい。まあ、それでもそのモール部分のみが浮かないよう、前後のランプと一体に見せる処理はなかなかなんである。
また、シューズからとった新色の黄色も鮮やかだし、グリーンも悪くない。青や赤も含め、本当はもっと高い彩度のビビッドな色でもいいと思うんだけど、それはきっと今後の展開にとってあるんだろう。やっぱり、どこか初代ヴィッツを想起させる大胆なインテリアも面白い。
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そういう明快なデザインテーマと、もうひとつ明快な「ホンダ・フリードのお株を奪ってやる!」という市場戦略の合致が今回の肝だ。その点、まさに「ちょうどいい」サイズとなったシエンタは、同じ5ナンバーサイズの3列ミニバンなら、四角四面なノア・ボクシーよりも短い分扱いやすいし、しっかりHVを設定し、しかもお値打ち価格に設定と抜かりはない。わずか2週間で4万台近くの受注を達成したのは、そうした要素がすべてバッチリ決まったからなんだろう。
ただ、いくら販売のトヨタだからって毎回こんなクリーンヒットとは行かない。
車種によってデザインからマチマチなやり方の中でこうした成功があるのは、やっぱり大メーカー故の「数撃ちゃ当たる」な世界だからかと思わせる。原点回帰の現行カローラや打倒ゴルフを目指したオーリスなどが、それなりのカッコを得られなかったのが逆の意味での例示だ。
これは統一デザインテーマで好調のマツダ、少数精鋭のスバル、あるいは共通顔を揃えるホンダなどとは別方向の展開である。どちらの打率が高いのかは?だけど、トヨタのあまりの担当主査頼み、偶然加減を見ると、そういう比較も無意味に思えてくるわけだけど。
あ、そうそう。なんでこのクルマに滝川クリステル?については、個人的にその1ピースだけどうしてもパズルが合わないんである。
(15/08/13 すぎもとたかよし)
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