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コラム&レビュー

新車心象風景:ダイハツ・ウェイク

 
 これが新ジャンルっていうのはちょっと違うんじゃないかと思う。


 縦長の妙なピラー形状をはじめ、不自然に背高に思えたタントに比べ、さらに85ミリも屋根を引き上げたウェイクは、何とも異様な威圧感に満ちている。たぶん、よりスクエアなイメージのエクステリアもその理由かと。

 そうやって実際に背が伸びているし、四角な格好で規格一杯いっぱいな佇まいは、たしかにニューカマーを感じさせる。けれども、じゃあこれが新ジャンルかと聞かれれば、まあ単にタントの全高を上げただけじゃないかと。そのタントはムーヴと異なる空間の取り方から新ジャンルと言えたけれど、タントからウェイクはそういう飛躍はないし。

 逆に、新ジャンルに仕立てようとするそのやり方が無理矢理っぽくて、そっちの方が僕には気になるんである。

 プラス85ミリでいよいよ不安定さは隠せないということで、外板パネルの樹脂部分を増やしたり、加えてルーフ板を薄くしてまで重心を下げた。さらに傾き制御のために従来より太いスタビライザーを驕ったっていう話だけど、それってどこか根本的に発想がおかしいんじゃないかと。

 いや、たとえばこれがスポーティカーで、より軽くすることを目的にしたのなら違和感はないけれど、こっちは「ひっくり返りそうな不安を感じないように」するためだ。スタビライザーについては、そうやって運動性能の基本に影響するなら「ひっくり返る」ことにじゃなくて、ふつうに全車種に付けなさいって話でしょう。ダイハツ的にはここを自慢ポイントにしているけれど、それって技術の使い方を間違えてるんじゃないか?


 
 もちろん、この空間が配送など商用車や、あるいは介護車両などとして優位であって、ウェイクがそういう新しい企画だったら話は多少違ったとは思う。どっちもひっくり返り対策なのは同じ話だけど、何のためにそれを実現するのかという目的の合理性には議論の余地は残ったかもしれない。

 そして、デカデカと大きくなっているわけだから重量も当然増えている。たとえばタントの同等グレードとの比較ではその差が80kgと、大きめの男性ひとり分もあったりする。けれども、ウェイクは動力性能での新しい提案をしていない。高く重くなったのにタントと一緒だ。

 当たり前だけど、大きくすることが新ジャンルというのなら、こうした規格部分にも手を入れるべきであって、増税を前に自主規制を取っ払うくらいのことはやってもいいわけだ。この企画などはそのいい機会だったと思えるし。

 何かこう、そういう基本的なところを横に置いて、やれゴルフバッグが縦に積めるだの、自転車がそのまま載るだのと騒いでいるのはどうかと思う。こんな無理矢理な感じでやっておいて、面白おかしいCMでパーっというのはどうも。

 もちろん、ハスラーの対抗車だ!なんて記事を書いている雑誌メディアもいかがなものかと。仮に、視界のいい運転席の高さから発想したという主張が本当だとしても、それをたれ流すだけのインプレッションではいけないと思うんである。

(14/11/29 すぎもとたかよし)

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