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ああ、やっぱりそうかと思ったんである。
COTYがデミオという、今年を考えれば実に順当な選出をしたので、これまで比較的コンパクトな実用車の受賞が多かったRJCを考えれば、まあこのままならダブル受賞かなと。
ダブル受賞で何か問題が?と思うわけだけど、これまでCOTYと発表時期の前後などで色々あったRJCだ。同じデミオじゃちょっとなあとなれば、候補は結構な話題となったハスラーあたりかと想像するわけである。で、実際そうなったと。
たしかにハスラーは「この手があったか!」という企画の勝利だけど、誤解を恐れずに言えばそれは派生車レベルのものだ。さすがスズキ、いつの間にかよくこんなの考えたよなあと感心はするけれど、でもそれ以上のものでもない。
ワゴンRをベースにしつつ新規提案に持ち込んだのもスズキらしいけど、これまた見方を考えれば軽自動車としての根本的な新提案はどこにもない。もちろん、個人的には好感をもつクルマだけど、じゃあこれが1年間を代表するクルマなのかなのかと聞かれれば、それはちょっと違うかなと。
これがRJCだから、というものある。ご存じのとおり、RJCは既存のCOTYのあり方に疑問を呈したかたちで設立されたもので、特徴としては主催者が研究者とジャーナリストであることだ。けれども、軽規格として特段新しい提案のないハスラーを研究者が推す理由もわからないし、ジャーナリスティックな視点もやっぱりわからない。
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仮に三本氏といった「庶民派」のジャーナリストがいるから、RJCは結構な頻度で軽を推しているんだとすれば、それもどうかと思う。たとえばワゴンRのように文字どおり画期的な「発想」と、ハスラーの面白い「発想」では次元が違う。だから、これを庶民の味方としてひとくくりにするのは少々粗っぽいだろうし。
いや、今年はデミオじゃなくちゃダメって話じゃない。ただ、「ライト感覚の軽SUV、ボディカラーにも配慮、街乗りも快適、夢を与える」といったハスラーの選考評はあまりに凡庸であって、これがデミオを抑える理由としてはちょっと説得力が不足ということなんである。
COTYは、10ベストとして各メーカーから1台ずつ候補車を選ぶという、相変わらず意味のないバカげたことをやっている。けれども、昨年のゴルフや、Cクラスと接戦となった今年のデミオなどには、かつてのような「何でこのクルマ?」という疑問符はとりあえずつかない。
一方、後発のRJCがいまだに輸入車を別枠にしているのは残念な感じだ。今年の輸入車部門はCクラスが受賞したけれど、仮に枠がなかった場合はどうだったのか。これもまた、三本氏流の「輸入車は贅沢品だ」的な発想での運営だとしたら、だから軽をという傾向にはやっぱり疑問が残るんである。
クルマを論じるときにジャーナリスティックな視点は必須だと僕は思う。けれども、「あるべき内容、然るべき価格のクルマ」は「安くて便利なクルマ」とイコールじゃない。
「メーカーべったりのCOTY」はもちろんイケナイし、過度な庶民派志向も望ましくはなくて、肝心なのはやっぱりバランス感覚なんだろうと思う。たとえば、ここ数年の欧州イヤーカーがVWのポロとゴルフ、日産リーフ、プジョー308なんていうのを見ると、好き嫌いはともかく、公平で冷静かつ安定した大人の視点が感じられる。
そうそう大人の視点だ、いたって平静な大人の。
(14/11/24 すぎもとたかよし)
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