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コラム&レビュー

新車心象風景:ルノー・ルーテシア

 
 ああ、またやられたか、と思ったんである。


 5ナンバーサイズに収まらなかったとはいえ、全長4mのコンパクトに違いない新型は、ルノーらしさを感じる「ちゃんとした」クルマになっていた。

 それは内外装に顕著で、ボディの工作やインテリアの作りも実に丁寧に仕上げられているんである。ただし、特段に高級ということじゃなく、歴代のルーテシアの進化を着実に積み上げてくれば、まあ2013年にはこうなるよなあ、といったものだ。

 「ちゃんとした」というのはつまりそういう意味で、やるべきことを普通にしっかりやっていると。そんなことはハナから当たり前のことなんだけれど、ここでは何度も書いているように、マーチやヴィッツ、あるいは燃費至上主義の一部の軽自動車みたいに、明らかな手抜き、または後退すらしている日本車では、残念ながら例外も少なくないんである。

 1.2リッター・ターボをベースエンジンにしたのもそうだろう。実用上不足なく、しかし省燃費といった現代の要望に素直に合わせた設定で、過剰じゃないけど手抜きもない。必要なものは必要なだけちゃんと用意すると。しかも、この4気筒は日産とは別物だというし。

 もちろん、すべてが完璧などと言うつもりはない。たとえば、新しいデザインディレクターによるルノーの新解釈は、それなりにクセがあるから賛否もあるかと思う。


 
 件のフロントフェイスはオリジナリティがあるけれど、あまりに有機的な造形は、もう少し他の車種での展開を見てみないと何とも言えないし、抑揚に富んだサイドボディも、シルエット自体はいたって普通のハッチバックスタイルだから、どうも装飾的な処理に思えてしまうところがあったり。

 内装も、作りこそ丁寧だけど、ピアノタッチの1枚パネルはやっぱり唐突感が強い。これ、日産がマーチやノート、デイズでやっていて、ひどく安普請なインパネにそれだけ取ってつけた感じがあるんだけど、その悪いイメージも重なったりするから余計だ。べつにそこはマネしなくても、と思うんだけど。

 まあ、そういう部分はあるにしろ、この良品が200万円を切るというのはやっぱり魅力的で、ポロあたりとガッツリ組み合う商品力は確実にある。

 やられた・・・というのは、こうやって日本お得意の筈のコンパクトでまたしても出し抜かれたなということなんである。マーチやヴィッツなどは、初代や2代目で欧州イヤーカーにまで届いていたのに、その後がいまの有り様だからどうにも情けないし、高い技術力を持ちながら、内向きな軽自動車にこだわっているうち、まんまとup!に持って行かれるとか。

 いや、日本だって近日中にホンダが本気のフィット3を出すぞ、という話もあるけれど、プロトタイプを見ている限り、新しいHVをはじめとした中身はともかく、妙に子供っぽいスタイルが若干気になって気は抜けない感じだ。せっかく初代と2代目がいい見本だったのに。

 世の中、当たり前のことを当たり前にやるのがいちばん難しいなんて話がある。その意図するところは理解できるけれど、だからといってそう簡単に安きに流れることが当然だとも思えないじゃないか。

(13/08/23 すぎもとたかよし)

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