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なぜこういうスタイルなんだろう、と思う。
刷新したベースエンジンに、新世代のHVシステム。基本的なグレード展開はそのままに、中身の更新に注力した3代目は、フルモデルチェンジに十分足るだけの材料を持っていたんである。
まさに満を持しての新型デビューは、これが「ホンダの本気だゼ」とアピールを隠さない。初代と2代目を上回る成功はもう約束されたものという声は、メーカー自らはもちろん、すでに雑誌メディアからも聞かれるところだ。
実際、評価の高いスイフトともデミオとも異なりながら、フィットは独自の方向性でちゃんと成長してきた。それはこの3代目もそうで、決して立ち止まることはなく、ましてや後退もなく、誇るべき日本のコンパクトカーと言っていいんじゃないかと。
そうなんだけど、この3代目にして「おや?」となったのがスタイリングなんである。
たとえば大きく変わった顔。ホンダはこれが今後のグローバル展開車専用グリルだと言うけれど、すでにインサイトなどで原型を示していたこの顔に特段の新鮮味はない。何でもホンダは今後デザインで“攻め”に出るそうで、この顔の設定もその一環なのかもしれないけれど。
ま、ファミリーフェイスと言えば聞こえはいいけれど、それまで築いた車種別の個性や特徴をなくしてまで統一する必要があるのかは考えどころだろう。もちろん、一定の様式を持っていても、クルマによってそれなりの応用がきくものならともかく、今回のランプとグリルが一体になっている顔は、展開の幅が相当に狭そうだ。
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いや、クルマ全体を見ればこれがフィットであることは明白だれど、少なくとも顔に個性は感じられないし、これがフィットの顔である必然もあまり感じられない。初代、2代目と巧いこと育ったフィットの財産が、そこにはもう残っていないんである。
そして、スポーツカーのように大きな口を開けた前後のバンパーは、フィットをいささかずんぐりしたフォルムに見せてしまっている。本来、安定感を強調する筈のレーシーな処理なんだけど、この小さなボディではどうにも消化できず、後ろ姿などには逆に妙な腰高感まである。
さらに、件のボディサイドラインはやっぱり取って付けた感が強い。複雑なランプ形状の新しい顔や、キックアップさせた落ち着きのないサイドグラフィック、上方向に拡大したリアランプなど、とにかく3代目はゴチャゴチャと要素が多過ぎるんだけど、逆にそれで全体を何とか支えているフシがある。サイドラインは、その悪循環上に引かれたとしか思えないんである。
何でも今回はNSXを手がけたデザイナー氏が担当したそうだけど、そのスポーティの味付けがあまりに短絡的で子供っぽいんである。そもそも、スポーティだというなら2代目だって十分スポーティで、しかもその表現は実によく練られた「大人な」ものだったじゃないか。
「常識を疑え」といったオーリスが実に退屈で子供っぽかったのと一緒で、妙に力むとロクなことにならないのが日本車の常、のような気がする。頑張った中身の進化を考えれば、このチグハグさはかなり残念な感じだ。
いや、もちろん僕らユーザーだって相当子供っぽいから、「今度のフィット、スゲェ格好いいじゃん」となることを、もしかしたらスッカリお見とおしだったりするのかもしれないけれど。
(13/09/19 すぎもとたかよし)
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