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コラム&レビュー

新車心象風景:ボルボ・V40

 
 地元のディーラーに行ったところ、何といまの時点で4ヶ月待ちだそう。


 日本の市場では、とくに三菱と一緒にやっていた初代は相当残念な感じだったんである。ああ、これがあの240や850を作ったボルボなのか、と。経営的な安定や余裕がないと、メーカーなんてものはアッという間にこんなことになっちゃうのか、とか。

 そんな中、変化の兆しはC30に続く60シリーズからというのは多くのユーザーの共通した認識かと思う。その延長上に登場した新型のV40は、新しい中国のオーナーが“好きにやらせてくれた”最初の商品だというウワサが、なるほど妙に納得できる出来だった。

 いや、何がスゴいって、残念な感じだった40シリーズを、たったこの一世代で完全に立て直したところなんである。

 基本スタイルは、60シリーズを考えれば想定外というほどじゃないにしろ、低く構えたフロントは一線を越えたし、ワゴンからハッチスタイルへの転向も大きな決断だ。

 「こんなのボルボじゃないよ」という一部ファンの声は想像できるけれど、たとえばシンプルさを失っていないフロントランプや、しっかり軸をとおしたフロントグリルの造形は、モチーフとなった名車1800シリーズだけじゃなく、近代ボルボのイメージすらちゃんと残しているのを感じるべきだろう。


 
 もうひとつの1800モチーフであるキャラクターラインにしたって、造形はそれを意識しないと分からない程度だけど、メルセデスのAや日産ノートなどの鬱陶しさを考えれば、逆にこのくらいに抑えた方が好ましいと思えるのが不思議なところだ。

 そして、V40の印象と立ち位置を決定付けているのがインテリアのクオリティなんである。ベースグレードが黒だけなのはいただけないけれど、クラスレスを実現している作り込みの良さは、これでもってゴルフを選ばない理由にもなり得るほどで、それをこの1台でポンとやってのけたのがスゴいなと。

 アテンザと同様、車種が少ない中規模メーカーの商品作りが、今回は本当にいい方向に出たんだろうと思う。一歩間違えれば会社が傾く環境の中で、少なくともCセグメントはこれに賭けるんだという意気込みが、しっかりとクルマ作りに表れている。

 それは、ゴルフをライバルとするトヨタのオーリスがあの程度で自己満足していたり、クラスは違えど、日産ノートのメダリストが“プレミアム”などとしているのを見れば、メーカー規模の違いも含めて、どれだけ次元の違う世界でクルマというものを考えているのががよく分かる話じゃないか。

 効率のいいターボエンジンやDCT、歩行者エアバッグや270万円からという値付けなど、人気の秘密は他にもあるにせよ、とにかく「いいもの」をじっくり着実に作り上げたことには関心するし、敬意も持つ。もちろん、好き嫌いは別として。

 欲を言えば、欧州で展開するディーゼルエンジンのような選択肢を用意してくれれば対ゴルフ的にも盤石だろうし、これを見ちゃうとBセグメント、即ちV30を出したりしたら、さらなる日本のオーナー増加にもつながると思うんだけど。

(13/04/26 すぎもとたかよし)

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