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コラム&レビュー

新車心象風景:フィアット・パンダ

 
 きっと、よくできたコンパクトカーなんだとは思う。


 四角い初代が名車とされたのは、シンプルを極めたスタイルと、とことん実用に徹した機能を、廉価かつ最小ボディで実現したからなんだと思う。

 変形トールボーイの2代目が登場して分かったのは、いまだ日本で人気の初代のカリスマ性と、イタリアのユーザーが求める「ふつう」の実用性はまったく違うんだという、ごく当たり前の事実だった。

 そりゃそうだ。いくらガンガン使い込む実用車だからといっても、より広い方がいいし、見た目の質感が高いのに越したことはない。もちろん簡単に壊れない信頼性も欲しいし、いまどきなスタイリングだって期待する。

 だから、3代目がより大きく立派になったのも、たぶん自然な流れなんである。インテリアなど、いまやどこに出しても恥ずかしくないほどのクオリティアップだし。

 そんなこんなは十分理解したうえで、しかしこの3代目はどうにも「ユルい」。

 ベルトーネによるという2代目は、初代との共通性は見当たらないにせよ、どこかにコンパクトカーとしての凝縮感が残っていた。仮にそれが上級車の高質さと反対方向だとしても、実用コンパクトとしては決してマイナスにならない要素だ。

 え、これがパンダ?と言われながらも、一定数の支持を得た理由もまたその辺に隠れているような気さえする。妙なカッコだけど、それなりに機能性を感じるし、コンパクトとしての愛着も感じる。欧州イヤーカーになったのも、それ相応に理解できると。

 で、新しい3代目にはそのあたりがどうにも足りない。

 スタイルは、一応2代目をベースに考えたのは分かるけれど、ボヨンと緩んだボディにコンパクトとしての凝縮感はないし、機能性もまた感じられない。なるほど室内は豪華になったけれど、特段パンダというクルマのオリジナリティは見当たらない。


 
 フィアットにこの傾向が見られ始めたのはプント・エヴォの頃からだろうか? シャキっとしたオリジナルプントをいじって間の抜けた顔にし、インテリアもボヤッと締まりのないカタチにしてしまった。たしかにある種の質感は向上したけれど、肝心の「切れ」を失った感じ。

 それは個人的に、オリジナルを巧妙にリメイクした500の大ヒットに原因があるような気がしてならない。

 新しい500はパンダ同様大きくなったし、何よりクオリティがアップした。それでもってミニに十分対抗できるプレミアム路線への変更が成功した希有な事例だ。

 ただ、500が成功した理由の肝は、あくまでもオリジナルの個性を失わなかったからであって、その落とし込みが相当に巧かったからなんである。ここにブレはまったくなくて、曲面を多用した丸っこいスタイリングも、だからそこでは成功の要素となった。

 ところが、パンダを始めとした昨今のフィアット車は、その成功要素が単にフヤケた肥大化と質感向上のセットになって無防備に展開され、次々に魅力を失っているようにしか僕には見えないんである。

 それが証拠に、調子に乗って作った500Lは、肝心のオリジナリティが霞んで実に醜い結果になってしまったじゃないか。もちろん、ミニのクロスオーバーだって少々やり過ぎだけど、オリジナル度合いには随分な差があって、それが最終的なまとまりに表れている。

 3代目パンダは、ザックリ言ってしまうと、この500Lとの違いが分からない感じだ。似たようなサイズのクルマを似たように育ててしまった結果、異なる車種の見分けもつかなくなってしまったと。マイナーチェンジしたクロマもそうだったし、商用車のクーボやドブロも同じ方向で、とにかく「ユルい」。2気筒ターボエンジンなどはパンダらしいと思えるけれど、もはやこのエンジンもパンダ専用のものとは言えない状況だし。

 いや、だからパンダやウーノ、プントでフィアットを支えたジウジアーロじゃないとダメなんだよねえ、などと言うつもりはない。けれども、現在の商品企画、とりわけデザインスタジオの要に何かが欠けていることは間違いないと思う。

 豪華になったパンダが、日本市場でどの程度受け入れられるかは分からない。けれども、イタルデザインをグループに引き入れたVWグループから登場したup!こそが、何となくパンダの後継にふさわしく思えるのは皮肉なことではあると思う。

(13/05/13 すぎもとたかよし)

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