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出足好調と伝えられていた三菱のアウトランダーは、その出鼻をくじかれたかたちになってしまった。
もちろん、リコールの原因はメーカーにあるとしても、クルマのリコール報道が“大好きな”朝日新聞などは、例によってことさら大きな記事で取り上げており、直前のアテンザのリコールが霞んでしまった程なんである。
雑誌での三菱車の取り上げ方は、かつてのリコール問題による長期販売低迷具合に加え、そもそも新車台数が少ないこともあってか、発表時にはどこも相当な肩入れ感がある。たとえば、D誌では数ページにおよぶ潤沢な紹介&比較記事が展開されていて、最終的にアウトランダーの優位性を訴えているんである。
もちろん、偏った肩入れはともかく、少ない新型車を丁寧に紹介すること自体には何の問題もない。しかも今回はPHEVという先進の技術も大きなウリだ。これをクリーンディーゼルと比較したり、あるいはスマートグリッド機能の優位性を打ち出すのだって自然だろう。
問題は、その肝心のバッテリーに伴うリコールを、今後どうやって扱うのかだと思う。これまで、クルマ雑誌の多くはこうした件についてほとんど触れることはなかった。新車として大いに宣伝することはあっても、故障や不具合については「知りません」といった姿勢だ。
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けれども、それはやっぱりおかしい。
まずもって、手放しに推薦してしまった媒体としての責任がある。それが雑誌自体の責任じゃないにしても、読者=ユーザーへの説明責任程度はあって然るべきという点において。
そして、専門誌としての役割も大きい筈だ。もともと、自動車評論家やメディアの多くはハード面を語ることが多く、今回のアウトランダーにしたってPHEVとしての機能を中心に解説、評価していた。そうであるなら、今回のリコールについても技術的にその不具合を徹底解説しないのは不自然でしょう。
奇しくもD誌同号では、別の記事でボーイング社の新型機におけるバッテリー破損の解説をしているんである。曰く、バッテリー自体に原因のすべてがあるのではなく、配線を含めた周囲の設計を含めて考えなくてはならない、という話だ。
記事を書いた評論家氏はEVを積極的に推進する立場なので、もしかしたらその中心となるバッテリーだけを悪者にするのはいかがなものか?という強い意図があったのかもしれないけれど、悪者がバッテリーであれ周辺回路であれ、クルマの場合もその原因解説を行わなければ、これはもうバランスを欠いていると言わざるを得ない。
いや、販売に協力して不具合に無口になるのだとすれば、ユーザーの安全をも軽視していると言われても仕方がないだろうし。
ということで、とくにD誌に限らず、今回の件は多くの雑誌でどう扱われるのか扱われないのか。ユーザーとしてはしっかり見届けるべきだと思うんである。
(13/03/30 すぎもとたかよし)
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