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コラム&レビュー

新車心象風景:マツダ・アテンザ

 
 頑張って欲しいと思えるのは、結局入魂の具合なんだと思う。


 かつての5チャンネル化の失敗を踏まえ、ズーム・ズーム戦略以降は大幅にラインナップを整理し、今回のスカイアクティブ期に入ってからはロータリーのRXも落ちて、ますます集約方向にある。

 ラインナップ数を考えれば贅沢なコンセプトカー群から、各市販車への落とし込みはより明快になり、善し悪し、あるいはメーカー自ら日本市場では数%の支持でOKと公言するように、ある種の好き嫌いを別にすれば、マツダが何をやりたいのかは、かなりはっきりとアピールできるようになった。

 実際、この新型アテンザのように、たった1台のクルマにこれだけの時間を掛け、じっくり開発過程を告知する例は他にほとんどないんである。言ってみればトヨタでは86、日産ではGT-Rのような一大キャンペーンが、ごくふつうのセダンで展開されているようなものだ。

 そりゃあ車種が少ないから・・・なんて声もありそうだけど、会社の規模はどこもそれなりに車種数に沿っているんだから、簡単にそうは言い切れないと思う。要はメーカーの商品企画や開発姿勢が、その広報も含めていかにブレていないか、じゃないのか?


 
 たとえば先のトヨタが次々に送り出す新型車を、大物俳優を使ってドラえもんだのRe BONEなどと騒ぐより、1台のコンセプトカーから1台のセダンを生み出す過程をそのまま見せるだけのマツダの方が、何倍もその真意が伝わるのは多分そういうことなんである。

 さらに、そういう少数精鋭の商品が、それなりの時間を掛けたと言えるだけの品質感を伴っているのがキモだろう。

 だって、少数というなら三菱だってスバルだって同じだけど、新しいミラージュにそんなものはコレっぽちも感じないし、フォレスターにさえアテンザほどの「満を持した感」はないんである。

 新しいアテンザの高評価なクリーン・ディーゼルや流麗なデザインは、だからフル・スカイアクティブや“塊動デザイン”という、各々の要素だけで語ることは難しいと僕は思っている。フェンダーから伸びるキャラクターラインの是非が、即このクルマの是非にはならないと。

 しっかりとした基礎技術をブレのない商品企画で、かつじっくり時間を掛けて作れば、少なくともこのくらいのクルマは出来上がるんだという、そこがいちいばんの評価点なんじゃないか? 本来、どのメーカーのどのクルマもこうあるべきだろうという点で、僕は新しいアテンザを支持したい。

 もちろん、現行プレマシーのような残念なモデルチェンジや、少々わかりにくいOEMの軽商品など、まだ整理が必要な余地はあるし、アルファとの提携に踏み切った高コスト体質みたいな話もあるけれど、まあ、それはまた別の話として。

(13/01/07 すぎもとたかよし)

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