|
トヨタのマイルド・ハイブリッドですら「なんちゃって」感があったので、もはやこのS-HYBRIDをインチキでは?と疑ってしまっても仕方がないかもしれない。
けれども、商品企画として冷静に見てみれば実によく考えられているんじゃないかと思ったりする。
まず、サブバッテリーを追加して単に回生エネルギー量を増やしただけとはいえ、やっぱりそれはそれでひとつの新技術だということだ。新しいノートでデビューするという小排気量過給エンジンも注目されているけど、それら日産の新技術群のひとつとしておそらく戦略的に開発されたものであって、インチキっぽくても商品技術として他メーカーに先駆けたのは事実でしょ。
実際、このシステムでもしっかり免税になっているから面白い。いわゆる新世代エコカーの大幅普及を目標に掲げている国土交通省や経済産業省にとっては、第3のエコカーはもちろん、これだって十分アリ、Welcomeなわけで。
そして、ほとんどのユーザーにとって肝心なのは、「ハイブリッド」という事実・名前であって、その仕組みや効果の詳細じゃあない。エコカーにもいろいろあるけれど、やっぱりハイブリッドのわかりやすさは絶大なんである。
事実、セレナの燃費はJC08モードでリッター1キロ程度しか向上していない。けれども、そもそもがクラス・ナンバーワンの売れ行き商品なんだから、“この程度”の後押しで十分追加効果があることを、日産はよく承知しているんだろう。
|
|
何でもかんでもエコカーという国内市場はどうかしているけれど、そこに文字どおり国内専用商品で超簡易システムを持ち込んだ日産は、だからなかなか商売上手だ。ハイブリッド後発組としては、こういう展開があったのかと思わせるじゃないか。
ただし、その国内市場全体を見渡せば、売れてる商品がさらに売れるだけでは、いまの日産は立ちゆかないようにも感じられる。粗悪な作りでコケたマーチや、マイナーで失速したキューブ、壊滅状態のセダン群など、以前ほど大きくない国内ラインナップ内での低打率者がまだまだ多いし。
その点、商品自体の魅力とそれに見合ったイメージの発信、そして今回のような付加価値の追加など、1台のクルマを作って売り出す際に、セレナのような各要素の“一致”はとても重要だ。
で、ティーダと統合と言われる新型ノート以降、新技術だけじゃなく、日産はメーカー内の市場食い合い抑止と、商品開発の高効率化を目指した車種の統合を進めるみたいで、そこに一抹の不安が垣間見られたりする。
統合がグローバルな単位で行われること自体はいいけれど、たとえば、いくら法人需要が多いとはいえ、カローラ並みに退屈そうな中国版サニーをラティオにするとか、セレナで見た“一致”を無視したことをやっていると、結局はよくわからないラインナップが今後も続いちゃうと思うので。
(12/08/21 すぎもとたかよし)
「日本の自動車評論を斬る! すぎもとたかよしのブログ」へ
|