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コラム&レビュー

新車心象風景:トヨタ・カローラ

 
 「原点回帰」という、ある種の謙虚さを持って開発すれば、果たしていいクルマはできるものだろうか?


 全長を50ミリも削ったり、1.3リッターを復活させたのはコンパクトカーの原点なんだろうし、水平基調のボディはいまどきのエモーショナル方向に対するベーシックセダンへの回帰かもしれない。また、フロントウインドウを大きくラウンドさせ、細いAピラーで視界を確保したのも実用車の原点と言えるだろうし。

 新しいカローラで語られる原点回帰や「ユニバーサルデザイン」、あるいは「安全・安心」という言葉が、そうした諸々の設計に表れているのは比較的分かりやすい。

 けれども、そうやって「あるべき姿」をつぎ込んだ新しいカローラが、なんでこんなに印象が薄くなってしまったのかは、結構重要な検証点だろう。

 さしあたり、そもそもカローラの原点って何だというころがまず引っかかる。

 文字通りの原点である初代のキャッチフレーズは“プラス100cc”、“隣のクルマが小さく”という有名なアレで、とにかくライバルより大きく立派にという方向だ。べつに揚げ足をとろうってわけじゃないけど、今回のダウンサイジングとは真逆の発想なんである。

 そんなこんなをあれこれ考えると、新型の原点は何となく80年代の80,90系あたりを想定してるんじゃないかと思えてくる。水平基調の端正なスタイルや、ファブリックを豪華方面に多用したインテリアなど、新型のイメージにかなり近いということで。

 けれども、それは言い方を変えると「新型は80,90系とどこが違うの?」とも言えたりする。もちろん、義務化を睨んだVDS、あるいはサイド+カーテンエアバッグの標準装備といった、現代なりの技術的進化は顕著だ。アイドリングストップによる燃費向上もまた同様に。


 
 ただ、そういう技術のアップデート以外の基本的なクルマのあり方としては、実はほとんど変化していないんじゃないかと感じる。それが、どうしようもない印象の薄さを招いているんじゃないのか?

 それは、もしかしたら単純にHVを設定すればよかったのかもしれないし、あるいはエンジンのダウンシジングでよかったのかもしれない。あるいは、究極的な軽量化や、超モダンなスタイリングでも。

 実際、先日のデザイナーインタビューでは「このクルマからトヨタが変わる」という発言があった。そこでどう変わるかはメーカーの考え方次第だけど、その変化が見えるようで実はよく見えないのが新型なんである。

 いや、思い返せば、カローラは近年でもそれなりに変化を経験している。バブル期の「大きく愛のような」カローラでは高級コンパクトカーへ変貌したし、その後の「ニュー・セチュリー・コンセプト」では欧州的パッケージングで合理化を推し進めた。

 新型は、大きく変わったと自称しながら、実のところその変化の具合や勢いは、それらかつての試行には遠く及ばない気がする。80,90系ほどの明快でまとまりがいいわけじゃないスタイリング、とくに先進的な設計でもないエンジン、グレードによって装備やクオリティに差を付けるという旧態依然な発想のインテリア。

 メインユーザーがリタイア世代で、実際内外装にはそういう味付けをしながら、イメージキャラクターは小栗旬という苦しい選択もそれを後押ししている。トヨタの代名詞でありながら、クラウンのような一貫性を打ち出せないのは一体どうしてなんだろう?

 TVや新聞で紹介されたように、新型の発表会では「東北発」が強調された。もちろん、この厳しい時代に国内生産をブチ上げるのは、トヨタほどの企業にしたって相当な決意が必要だったろう。今回の「トヨタの変化」とは、何て言うかその辺を込みの話に聞こえて仕方がない。

 ただ、そういう決意や勢いによる社長の言葉、あるいは現場の工場マンの熱い言葉と、商品としてのカローラの魅力は、当然だけれどまったくの別物なんである。

(12/05/28 すぎもとたかよし)

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