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コラム&レビュー

新車心象風景:レクサスGS

 
 結局、何だかんだ言って、GSって何?という話なのかと思う。

 高級車としての歴史が浅いとされるレクサスだけど、それでも初代アリストからカウントすば、GSだってもう4代目になる。これはライバルとされるBMWの5シリーズなら96年のE39に当たるわけで、そう考えると簡単に浅いと言っている場合じゃない。

 けれども、現実の新型GSを前にしてその手の歴史を感じるかと言えば、やっぱりそれはないんである。


 冷静にサイドから眺めれば、強いアーチを描くルーフによるビッグキャビンや、あるいはフロントホイールアーチから始まる豊かなショルダーラインはたしかにGSの文法で、スポーティセダンの要素を継承しているのがわかる。

 ただ、LSを思わせるトランクやマークXみたいなリア回りはその文法を曖昧にしているし、どこかクラシカルなインテリアは、善し悪しは別として、やはりGSのイメージを迷わせる。そして、決定的なのは今回のハイライトである「スピンドルグリル」だろう。

 まず、その造形自体が妙だ。確かに円錐を思わせる形ではあるけれど、もともとメーカーを問わずフロントグリルには逆台形が多いし、そこに最近主流の「ハの字」状のアンダーバンパーを組み合わせればほぼ自動的にこのカタチになる。


 
 たとえばメルセデスなんかもそうだけど、意図的かどうかはともかく、レクサス自体、CTがすでにスピンドルになっているんである。それをことさら誇張させて見せる発想が、いまひとつ僕には理解できない。

 そして、このグリルを「ウリ」にしてしまう広報戦略も疑問だ。

 TVCFではグリル枠を光らせて「どうだ!」って感じだけど、いくらクルマにとってグリル=顔が重要であるとしても、やっぱりそれはクルマの一部分に過ぎないんである。

 だから、こいつを推すあまり、先代を継承したボディが霞んでしまようならまさに本末転倒でしょう。しかも、このグリルが今後レクサス全車に採用されるなら、なおさらGSの特徴じゃなくなるわけだし。

 先のBMWなど、欧州勢のようにファミリーフェイスを持たせるという発想や、アウディが先行し、その欧州ですっかり定着したシングルフレームグリルをレクサス流に取り入れたい、といった企画はすんなり理解できる。

 けれども、それはあくまで基本となる魅力的で独自性のあるボディと一体として考え、語られるべきものであって、グリルがひとり歩きするような次元ではイケナイ。

 レクサス、あるいはGSって何? と聞かれて「スピンドルグリルだよ」じゃ、あまりにお寒い話じゃないか。

(12/02/04 すぎもとたかよし)

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