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またしてもカタチの話で申し訳ないんだけど、あれ、こういう方向性なの? というのが第一印象なんである。
強いエッジに凹面を組み合わせたクリス・バングルのデザインを引き継いだエイドリアン・ファン・ホーイドンクは、その方向性として、たとえば現行5シリーズのように、バングルデザインのソフト化路線を目指しているように見えた。
そのバングルデザインは、意外にもプロポーションそのもを崩していたわけじゃないから、「ありゃチョットやり過ぎでしょう」という線や面の処理を、より万人向けに直すという方向かと。
ところが、北米スタジオがキースケッチを描いたという新しいX3は、バングルの修正がどうのこうのじゃなく、何やらまったく別方向で、どうにも落ち着きのない造形やら意図不明のラインがテンコ盛りだ。
フロントフェイスは、キドニーグリルの大型化こそ氏のテーマとしても、上下にLの字を組み合わせたような不安定極まりないヘッドランプは一体どうしたことか。中国の新興メーカーを想起させる、このいまさらな処理は結構な驚きだ。
サイドのキャラクターラインもいけない。何でこんなにザックリ深くえぐるのかという疑問もあるけれど、それ以前に何ら新鮮味がない。メルセデスあたりが始めていくつものフォロアーを生んだこの方法をなぜいま?
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さらに、フロント、リアのホイールアーチにかかる中途半端なラインはもっといけない。プレスリリースには「前後ホイールの踏ん張り感を強調」とあるけど、先の深いラインに対してあまりに弱く、しかも妙な位置に引かれているので、そんな効果はどこにも感じない。
ボンネットも含め、この意味不明な多くの中途半端なラインは、最近のトヨタ車によく似ているんである。L字を意識したという複雑なリアランプも含め、だから一体何をやりたいのかサッパリわからない。
ただ、そういう疑問の大部分を打ち消してくれているのが、作り込みのよさだ。繊細なエッジをも表現するプレスの精度などは、まあずいぶんなコストを掛けているんだろうなと思わせるけど、その圧倒的な品質感による「ちゃんと作ってます」感が七難を隠す。これは、もちろんメルセデスやVW、そしてアウディなんかも同じなんだろうけど。
実際、単純に造形だけだったら、個人的にはスバルのフォレスターの方がよっぽどまとまりがいいと思う。若干残念なホイールアーチの処理を見直して、それこそBMW基準で組み立てたら相当いい感じになるんじゃないかな。
一部、文化系評論家には拝欧主義が根強いなんて言われる。僕自身はそうじゃないと自覚しているつもりだけど、まあ結果的に日本車の批評が多かったりするのは事実だ。
ただ、それにはそれ相応の批評理由があるし、先の「作りのよさ」が底上げをしていた部分もあったかとは思う。けれども、そうは言ってもやっぱりダメなものはダメという、今回はとても単純な話なんである。
(11/04/15 すぎもとたかよし)
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