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昨年の9月、写真の本を例に、メディアでもてはやされるEVの電力確保について書いたけれど、まさかたった半年後に現実のものになるとは思わなかった。
本書では東南海地震による静岡の浜岡原発がメインで、弱い地盤による自動停止不可、つまり核反応進行中の炉心破壊という最悪のシナリオまでが描いている。
今回は自動停止後ではあるけれど、直後の津波による海水取水口の損傷や制御用送電の停止による冷却水注入不可、それによる炉心溶融、メルトダウンはそのままの内容だ。
いまだ損傷のないという福島第1のふたつの炉心容器は海水による直接冷却に踏み切ったけれど、その効果はまだ不明だし、福島第2にも冷却支援が発動された。
僕は、熱心かつ理論的な反原発主義とかじゃなく、言ってみれば生理的に受け付けない人間だ。あの原発施設を見るだけで、途方もない拒絶感が体を走る。
避難中にひ爆した多くの人たちは、衣服や体を洗浄をすれば大丈夫といった報道があるけれど、呼吸と一緒に体に入った物質はどうなるのか。
炉心容器を海水に満たすための何十、何百人の要員、おそらく電力会社の下請け会社の社員たちは、およそ信じがたいほどの放射線を浴び、各人がひ爆制限時間一杯まで、いまこの瞬間に作業を続けている。もちろん、そんな報道はTVで放映されないけれど、彼らの健康状態はどうなるのか。
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「CO2の出ない、クリーンなエネルギー」
美しい女優やタレントを起用して流される、この悪い冗談のようなCMは、今後も続くんだろうか? 住民がひ爆し、従業員が代わるがわる高放射線を浴びるような代償を得てまで、僕らはこの方法を選ぶべきなんだろうか。
僕はゴメンだ。阪神・淡路大震災で、国や道路会社が「壊れない」としていた高速道路が倒壊したように、国や電力会社が「ありえない」と言っていた圧力上昇や炉心溶融が起きたんである。TVに呼ばれた推進派の大学教授らが、現実に進行する状況に目をそむけるかのような後手のコメントに終始するのは、この期におよんで民主党の責任だと発言する前政権役員よりたちが悪い。
これは、「地震大国日本に原発は作るべきではない」という従来からの懸念を、悲しいかな現実で証明したものだと僕は認識する。
電力の安定供給という大義も、太陽光、太陽熱、風力、高効率火力といった代替発電を、国と大手電力会社が本気で推進せず、中小の電気会社や、あるいは個人が高価な設備を買うような現状で語るべきじゃない。
異常気象や、あるいは今回のような災害に備え、供給不足時にのみ最小限基数の原発を「用意」しておくという考え方だってあるだろう。
いちクルマファンとしては、まるで空のマッチ箱のようにあっけなく流される数十台ものクルマや、滞りが予想される現地のガソリン供給を憂う気持ちもあるし、東北進出間もないトヨタの話題もある。
けれどもいまは、“環境市場”に乗って邁進するEVが、節電を呼びかけつつ「オール電化」を平然と訴える電力事業と同列に見えることに疑問を感じ、再び原発の話を書かせてもらった。
震災に遭われた方々へのお見舞いと、亡くなられた方へのご冥福をお祈りいたします。
(11/03/13 すぎもとたかよし)
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