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コラム&レビュー

第37回東京モーターショー「コンセプトカー・デザイン散策−日産ブースの巻−」

ベストワン
 当たり前の話だけど、全メーカー、全てのコンセプトカーについて感想を書いていると、とんでもなく長い話になってしまうので、今回のコラムは一応市販前提モデルに絞ってみたいと思っている。だから、日産ブースでは「FUGA」と「C-NOTE」が話の対象になってくる。
 で、先に書いてしまうと、今回の国産車ブースの中で個人的なベストワンがこのFUGAなんである。いやいや、あの障子風のサンルーフとか、ステアリングのスポークまで及ぶ白木調の装飾とか、例の「和」のコンセプトに共感したわけじゃない。スタイリングそのものに魅了されたんである。

完成したプロポーション

 何がいいかって、とにかくアッパーミドルサルーンとしてのプロポーションが抜群にイイ。美しい弧を描くルーフに、後端を逆スラントにカットしたバランスのよいサイドウィンドウグラフィック、ゆるやかな膨らみを持たせたショルダーラインに、躍動感を持たせるべく若干のウェッジを利かせたボディ。上下に弧を与えたフロントグリルを与え、日産の高級車の共通性を訴えるフロントフェイス。長いホイールベースと大径タイヤを収める大きなホイールアーチが醸し出すダイナミック感とスポーティ感。L字型でそろえた緊張感のある前後のライト、等々。
 そして忘れていけないのは、こうした美しさが、たとえばメルセデスやBMWなど、日本車がついついコピーに陥る外国車のどことも違ったオリジナリティを持っていることだろう。この方向性は現行シーマに始まって新しいスカイライン、ティアナに続いて4台目になるわけだけど、いよいよ完成型に近づいているんじゃないか。
 いくつかの雑誌では、こいつとクラウン・コンセプトを比較したりしているけれど、フザけちゃあいけない。そりゃあ日産のデザイナーに対してあんまりに失礼ってもんである。このFUGAは次期セドリック・グロリアとして、若干のサイズダウンを行うらしいけれど、何とかこの見事なプロポーションを崩さないよう頑張って欲しいと思う。

やっぱり日産車
 さて、次期のサニーだとかアルメーラ(パルサー)だとか言われているのがC-NOTE。何だよこれ、日産が作ったメガーヌIIか?という話が会場でも囁かれていたとおり、パッと見は本当によく似ているんだけど、実はフロントグリルの意匠と逆スラントのCピラー以外はかなり違っているんである。だいたいダブルウイングのフロントは日産がオリジナルだし。
 それでもこのクルマがちゃんと日産に見えるのは、Aピラー付け根のボンネットの切り込み線からヘッドライトへの流れがプレサージュやムラーノと同じ処理であることや、ヘッドライトから始まってショルダーラインへ続く「段」がリアランプに沿って落ちて行くところが、同じくムラーノや、あるいはマーチと共有された特徴だからなんだと思う。

デザインの軸
 僕が感心したのは、会場でこのC-NOTEチーフデザイナーに話を聞いたところ、そうした一連の処理は全て計算されているということなんである。実際最近の日産車は、一見それぞれ別の特徴を持ったクルマなんだけれど、でもああこれは日産だよナ、ということがちゃんと分かる。それは、どんなカテゴリーのクルマであっても、要となるデザインソースをキチンと盛り込むことによって成立しているわけで、これはある意味、全シリーズで同じ顔を与えているメルセデスやBMW、アウディなどよりも高度なデザインワークじゃないかと思ったりするんである。デザインで頑張るなんて言うと、とにかく奇抜なカタチを創り出せばいいと思いがちだけど、デザインは当然そんな薄っぺらなもんじゃない。
 C-NOTEについては、本当にこれが次期のサニーだというのなら是非ともそのセダン版を見てみたい。一見大きく見えて実は5ナンバーサイズあるこのクルマが、どんなバリエーションを展開するのか個人的にはとても楽しみだ。
 ま、それでも見る人ほとんどにルノー車を連想させてしまったのは、あんまり上手い作戦とは言えないけれど。

(03/11/22 すぎもとたかよし)

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