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クルマ好きの割に、クルマの本はほとんど読まない。専ら小説やエッセイを読むけれど、とくにクルマとは関係ないんである。
その理由はともかくとして、久々に読んだクルマ本が「インハウスデザイナー〜三菱カーデザイン日誌」(三栄書房刊)。80〜90年代に同社のチーフデザイナー、デザイン部長を務めた三橋慎一氏自身による日記風回顧録だ。
カーデザイナーじゃなくて、わざわざ“インハウス”となっているから、もしかして核はその違いかと思ったんだけど、実はそうでもない。70年に入社した氏の目をとおして、いかにデザイン部という組織が形成されていったのかがメインになっている。
ただ、それでもインハウスの特徴らしきものは垣間見えたりする。たとえば、リアランプの急な変更が発生したときは根気強い彼に任せよう、なんていう「業務分担」ぶりがいかにもサラリーマン的で面白い。
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また、氏のようにデザインセンスだけじゃなく環境や状況把握能力に長けて部長職に就く者もいれば、もちろんそんな能力のないデザイナーも職場にいるわけで、そういう混在ぶりもまた会社組織っぽくて興味深い。ま、僕自身がサラリーマンなもんで。
考えてみればピニンファリーナだって企業だから、デザイナーは同じく会社員とも言えるのだけど、デザイン会社と企業の中のいち組織であるデザイン部ではやっぱり違いは大きいんじゃないかな。
先日ここに書いたように、最近のある種のデザイン傾向にインハウスデザイナーの台頭が関係していると感じる自分にとっては、そのあたりの話が盛り込まれていればなお面白かったかもしれない。もちろん、今後のライター業の中で自分でそれができればいちばんいいんだけども。
氏が在籍した間の三菱では、二代目や五代目のギャラン、初代ミラージュあたりが個人的には好ましいけれど、たとえばそういう車種別の開発について整然としたストーリーは載っていないのでご注意を。
でも、企業の中のデザイン部署ってどんな? という疑問にはしっかり応えてくれると思う。
(10/07/29 すぎもとたかよし)
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