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■男の視点
クルマ、とくにコンパクトカーには一時期「女性仕様車」というのが流行ったことがある。クルマと言えば何となく男のものというイメージを払拭するためか、はたまた女性ドライバーが増えたからか、本当の理由はよく分からなかったけれど、ただ、どのメーカーも内容ときたらどれも似たようなものだった。
○赤やピンクのボディカラー
○赤やピンクのシート
○ハイヒールなどの小物入れ
○お化粧用のバニティミラー
とまあ、こんなメニューだったと思う。
で、その女性仕様車がすっかり影を潜めたのは、多分売れなかった、つまり女性に受け入れられなかったからなんだろうと思われる。理由は諸説あるけれど、その女性観がいかにも男の視点で考えられたステレオタイプなもので、当の女性から見れば「ざけんじゃないわヨ」ということだったというのが専らの説だ。ま、それに関しては僕も同感だった。
■女の視点
ということで、話は三菱コルトである。
8月21日に発表された「ブルーム・エディション」なる特別仕様車は、改めて女性仕様車とは謳わないものの、社内の女性企画チーム、FM-seedsが担当し、女性のオーナーを想定したというから、これはもう21世紀版の女性仕様車に他ならないんである。で、その特別仕様の内容はこうだ。
○2色の専用ボディカラー
○本革調シートカバー
○アクセサリーボックス
○白木調インパネパネル 等々
・・・・・同じなんである、昔と。いや、赤いボディがパール調になったり、ピンクのシートカバーがタグの色までこだわった白い本革調になったりしているんだけど、内外装の色や素材を変えたり、小物入れを追加したりというやり方は基本的に全然変わっていないんである。
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ま、これが今回も男の視点だったりしたら「またかヨ」で済むんだけど、何しろ今度は正真正銘の女性企画チームの作品だ。これこそが女性のためのクルマと言っても間違えではないだろう。ということはアレだ。以前の女性仕様車は趣味こそ極悪だったけれど、やっていること自体は対女性としてドンピシャリだったわけだ。
うーん、ここで男の僕が言うのも何だけど、それってどうなのかなあ。
■こんなのはどう?
だって、これじゃあ結局女性というのは、そのものの本質(この場合クルマという機械)じゃなくて、取りあえず見た目がお洒落な感じならOKということでしょう?FM-seedsの皆さんは自動車メーカーの社員、つまりクルマのプロとしてそれでいいの?
それから三菱自体にも言いたいのは、あまり使われない色や素材に興味を持つのは何も女性だけじゃないよ、ということなんである。それって黒いランドセルは男の子、赤いのは女の子という太古の考えと同じ発想で、要するに色や素材のチョイスに性別を持ち込むこと自体ナンセンスだと僕には思えるんである。男性社員から、あるいは女性社員からこんな面白い色の提案があったというなら、それは三菱コルトという商品として展開すれば良いだけの話で、男だの女だのという話じゃないでしょう?当然ユーザーにしたって誰がどの色を選択しようが自由じゃないか。
いや、それでも女性仕様車を作りたいというのなら、生物的に体格が小さく筋力の弱い女性に合わせたステアリングの大きさや重さ、角度、小ぶりなシート、より強力なブレーキアシスト、軽いペダル類、見きりの良い大型のミラー類、犯罪防止の緊急連絡システム等々、取りあえず見た目以外にもやることはあると思うけど、どうだろう?
え、体格のいい女性もいるって?いやだからね、そもそも女性仕様車っていう企画自体がアウトなんですよ。
(03/08/26 すぎもとたかよし)
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