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コラム&レビュー

クルマのまわりで:若者向けのクルマって?

 
 少し前の朝日新聞経済面に、トヨタ・ネッツ店の記事があった。
 話としては、奥田社長当時に若者向け店舗として発足させた同店が最近の若者のクルマ離れに悩んでいる、というもの。開店とともに投入したヴィッツは、いまや若者の購入対象になり得ていないと。

 で、打開策としては「値ごろ感のあるエコカー」が若者に受けるのではないか。そして、この秋投入のIQがウケるのではないか、とネッツ店のコメント。うーん、こういう話を聞いていつも思うのは、果たして「若者向け」のクルマって必要なのか、ということなんである。

 ネッツについて言えば、bBとかイストとか、ああいうのがつまり若者向けに考えたものなワケでしょ。けれども瞬間風速的には売れたものの、いまや不人気車リスト入り。じゃあ、これは単に若者向けの読みが甘かっただけなのか、というとそれも違うんじゃないのかなあと。

 僕は「若者向け」なんていう考え方自体がおかしいと思っている。そんな発想でクルマを作ってしまうことはバカげていると感じている。

 たとえば、自動車先進国の欧州市場を見ても「これは若い人向けです」なんていうクルマなんてほとんど見ない。斬新で意表を突くスタイリングのクルマは多いけれど、べつにそれが若者用ということはない。じゃあ、収入や貯えの少ない若者はどうしているかといえば、安い中古を買うか、新車でも廉価のエントリーカーを買うわけで、その車種自体は特別じゃない。


 
 たとえば、初代のプリメーラは欧州市場を意識した硬派のセダンだったけれど、走りの良さもあってか結果的には多くの若者も購入したでしょ。もちろん中古でも人気があるし。

 つまり、妙に若者に媚びるのではなく、まっとうに筋の通ったクルマを堅実に作っていれば若者は勝手に買うのではないか、ということ。これはべつにクルマに限った話じゃなくて音楽やドラマ、映画なんかもそうだけど。

 若者向けとか女性向けとか、そういうマーケティングに染まったクルマは一瞬だけワッと新規開拓者を生むけれど、結局すぐに飽きられるし後にも続かない。そういうやり方ばっかりやってきた結果がいまのクルマ離れの一因なんじゃないのか? もう何だかやたら細分化された無数の商品をバラまいて、結局わけが分からなくなって興味を失くすという。

 じゃあ、普通に大人向けのクルマはどうかといえば、それはそれでオヤジ向けみたいなマーケティング商品になっちゃっていると。つまり本物が見当たらない。

 あ、ちなみにIQが商品として若者の目にヒットするかどうかは分からないけれど、プレミアムだ何だなんていうチンケな売り方は違うと思うけどな。

(08/09/03 すぎもとたかよし)

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