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コラム&レビュー

新車心象風景:日産・ムラーノ

 
 発売してないけど、ちょっと先取りということで。


 LAショーに出品というかたちで 発表された新型ムラーノ。パッと見て、ああ、ムラーノまでこうなっちゃったか、というのが第一印象なんである。

 何がこうなっちゃったかというと、デザインテーマの喪失、あるいは希薄化ということだど思う。デザインをシフトした現行は、寸法はだいぶ違うけどマーチとの近似性を感じさせる上下二分のテーマがハッキリしていた。ヘッドライトから明確なショルダーラインをつけ、リアランプからバンパーに落ちてゆく下モノと、そこに載った優雅な上モノ。全体の造形が明快で分かり易く、かつアメリカンサイズのSUVには極めて新鮮な印象を与えた力作なんである。


 
 新型はたとえばヘッドライト周りやボンネット、リアランプ周辺なんかに凝った細工がしてあるんだけど、全体はヌボーっとしてつかみどころがない。つまり造形上のテーマが見えない。リアあたりはデュアリスとの共通性を持たせているみたいだけど、カタチとして必然性が見当たらないし。

 ああ、と思ったのは、これって今度のスカイライン・クーペも同じことになっているんだよね。ウソかホントかポルシェデザイン社が絡んだという先代は、明快な弾丸シェイプの大きな塊にアーチを載せて見事にまとまっていた。一方、新型はウネウネと抑揚は強くなったけれど、溶けたチーズみたいで造形の収束感がまったくなくなってしまった。

 実はこの手のモデルチェンジはトヨタのハリアーやエスティマも同じで、手元のチマチマした小細工に執心して全体のまとまりを失くすという、何ともありがちな発想だ。一見新しく未来的になったイメージは与えるものの、テーマ性がないから後に印象を残せないスタイルである。

 ま、ありがちとは言え、何たってムラーノはデザインをシフトしなくちゃいけないわけだから、これはちょっと見過ごせないなと。でも、ポンポンと優れたデザインが出た後にどうしてこういうことが起きるんだろう?

(07/12/04 すぎもとたかよし)

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