●「ガイアックス」は「発泡酒」になれるか
ベンチャー企業が開発した、低価格・低公害の新ガソリン代替燃料が、石油業界や税務当局を揺さぶっている。マスコミにもしばしば取り上げられたためご存知の読者も多いと思うが、簡単に状況をまとめてみよう。
ガイアエナジー(株)が、昨年1月から販売しているアルコール系燃料「ガイアックス」がそれ。普通のガソリン車にそのまま使え、燃費やパワーはガソリン並みだが、排ガスに含まれる一酸化炭素や炭化水素が10分の1以下というエコ燃料だ。石油業界の反発により、国内では製造の引き受け手がいないため、韓国から輸入販売している。
同社によれば、ガソリンとの主な比較は以下のとおり。
・原料の種類
GAIAX :天然ガスなど
ガソリン:石油製品
・燃料の種類
GAIAX :アルコール系燃料
ガソリン:揮発油燃料
・排気ガスCO値(一酸化炭素)
GAIAX :0.02%(2000ccクラス)
ガソリン:車検基準法上 4.5%以下
・排気ガスHC値(炭化水素)
GAIAX :10ppm(2000ccクラス)
ガソリン:車検基準法上 1200ppm以下
「成分の関係上、ガソリン税(1リットル当たり53.8円)や軽油引取税(同32.1円)がかからないため、レギュラーガソリンより10〜15円安い価格で販売できる」として急速に販路を拡大したため、元売り会社など石油業界が猛反発。
ガソリン税(国税)は課せられなかったものの、抗議を受けた自治省は、軽油引取税(地方税)をかける方針を打ち出した。
日経ビジネス8月21日号は、この課税論争を麦芽比率で税率が変る「ビール」と「発泡酒」の関係に例えて説明している。
麦芽に相当するのが「炭化水素」。炭化水素成分が50%以上だとガソリン税がかかる。ガイアックスは約45%なためガソリン税はかからないが、自治省は同成分が少しでも含まれていれば軽油引取税の対象と見なされると解釈。
窮地に陥ったガイアの金濱社長は、炭化水素成分ゼロの100%アルコール成分の新製品開発に取り組み、今秋にも発売する。しかも今回はディーゼル車向けの100%アルコール成分の軽油代替燃料も開発した。
ガイアの反転攻勢に、新税を創設してでも対抗せよとの石油業界や税務当局の姿勢に、既得権益を守るために、ベンチャーの芽を摘もうとしているとの批判も強まっている。
麦芽比率を抑えた低価格の発泡酒は、既に市場全体の4分の1を占めるまでに成長した。「ガイアックス」が第2の「発泡酒」になれるか否かは、我国の規制緩和やベンチャー育成策が本物か否かの試金石とも言えるだろう。(00/08/19 わたなべあさお)
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