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決してダメということじゃないんである。
初代のコンパクトさやカジュアルな雰囲気はまったく残っていないので、こんなのはCR-Vじゃないとか、何でいまさら日本市場にという声はよく理解できる。何しろ身内には巨体化したシビックやアコードなんて例もあるし、他社でも似たような帰国子女案件は少なくないし。
ホンダとしては、マツダのCX-8やスバルのフォレスターあたりなら十分ライバルになり得ると判断したんだろうか。たしかに、おそらく大ヒットとは行かないまでも、このサイズの3列シートなら日本でもギリギリ「あり」なのかもしれない。
なので、そっちの話は取りあえずOKとして、個人的にはやっぱりデザインに?がある。
いや、クリッカーの記事に書いたとおり、全体の佇まい、遠目のスタンスはなかなかいいんである。フロントのボリューム感やリアの踏ん張りなど、ボディの座りがとてもいい。それこそフォレスターなんかに比べれば抜群の安定感だ。
僕が気になるのは、そのボディに載るディテールなんである。
まず、顔。ソリッドウイングと呼ばれるランプとグリルが一体になったこの表現は、たしかにホンダ車のキービジュアルとして機能しているけれど、そもそもこの表情に魅力を感じることが僕にはできない。ランプはモチーフ上どうしてもシャープになりがちだし、グリルは金属感が過剰で、これが全車に適応する素材とは思えない。どんなスタイルを提案してみても、この顔を載せてしまうと「あーまたこれか」となってしまう。
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また、バンパー両端のスリットは、メーカーを問わずあまりに多くの車種が似たような処理をしていてもう食傷気味だ。デザイナー氏の話では空力処理の都合らしいけど、マツダが新しいCX-5で違ったアプローチを始めたように、もう少し発想の幅があり得るんじゃないか。[ ]型のスリットがあるだけで、個性が大幅に削られてしまう。
さらに、長く大きくなったリアランプはずい分と上の方に置かれ、どうも落ち着きがない。これはシャトルもほぼ同じカッコウで、もしかしたら最近のホンダの「好み」なのかもしれないけど、ボディの座りがいいだけに、この不安定感は実にもったいない。
ホンダは何年か前に「エキサイティングHデザイン!!!」を掲げ、妙に派手なスタイリングへ向かった。そこで生まれた厳つい顔や鋭いボディラインは、目立ちこそすれ、自動車デザインとしてはいささか幼稚に思われる。
一方、前回の東京モーターショウに出品されたアーバンEVコンセプトは、会場での話ではどうやら新しいディレクターの元で制作されたらしい。あまりに真逆な表現なのは、これまでの反動として、もしかしたらよりシンプルな路線に向かうのかもしれない。
CR-Vは、だから前体制の最後に近い商品なのかもしれない。そう思えば、この残念なホンダ顔も仕方がないところなんである。
(18/11/18 すぎもとたかよし)
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