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表現が難しいけれど、たぶん何も響かないクルマなんである。
高齢化したユーザーに対し、若い人に振り向いてもらおうというのはクラウンと同じ話かもしれない。そもそも、超高齢化社会の先頭を切るニッポンで、中心ユーザーが60歳代で何か悪い?というのがあるけれど、それを横に置いてもこれはどうなんだろうと。
だいたい、若者狙いの商品という発想が間違いだ。おそらく、若い社長にはかつてのハチロクが頭から離れないのだろうけど、あの若者人気はごく一部の走り屋に限った話で、大半の「若者」にとっては関係のない話だった。それは、新しい86の空振りで分かった筈じゃないか。
しかも、ビシバシと尖ったカタチにすれば若者向けになるという、二重の勘違いが残念だ。たとえば、FFファミリアやワンダーシビック、流面型セリカ、アートフォースシルビアにR32スカイラインなど、若者にウケたというクルマは、尖っているどころか端正で美しいクルマばかりだった。
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さらに言えば、それは「若者だけ」にウケたのではなく「若者にも」ウケたのであって、実際には幅広い層に評価されたいわば成功作だ。つまり、本当に優れた商品を作れば、年齢に関係なく一様にヒットするんである。それを、妙に派手な意匠を前面に出してスポーティだの若者だのと謳うのは実に滑稽だと。
もうひとつ、評論関係も残念だ。ご存知のとおり、これは新型オーリスなんであって、カローラ名は国内市場の都合に過ぎない。キーンルックの権化みたいなカタチは欧州での統一デザイン故だ。だから、媒体で踊る「これがあのカローラなのか?」「カローラが大変身!」みたいな記事は本当に興醒めなんである。提灯記事であるばかりか、そもそも一部の読者にとっては誤解を与える内容にもなる。
そして、新型が出る度にゴルフを引っ張り出して「今度は追いついた」「一部は追い越した!」みたいなお約束記事も虚しい。あまりに「ガキっぽい」コンセプトが、「大人」のゴルフの前に毎回フェードアウトして行くのに、今回も学習されることなく繰り返されているのがまた滑稽だ。
カローラスポーツはずいぶんと派手に登場した。けれども、何かこう、どこにも引っかからない、何も響かないクルマなんである。
(18/08/02 すぎもとたかよし)
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