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コラム&レビュー

新車心象風景:トヨタ・カムリ

 
 いろいろな部分でズレている感じがするんである。


 まず、大のオトナが妙に舞い上がった発表会の雰囲気からしておかしかった。いや、いいクルマができたという自負は歓迎するけれど、開発主査が前のめりで「がんばりました!」と声を高める姿に、冒頭いきなり引いたわけだ。

 そこに「ビューティフル・モンスター」である。耳を疑ったというか、聞いているこっちが恥ずかしい具合だ。発案は代理店なのか宣伝部なのか知らないけれど、止める勇気を持った人間はいなかったのか?

 さらに、アンバサダーのテリー伊藤氏と続く。そもそも80年代の元気のよさ云々の安易なコンセプトが疑問だけど、そこでテリー氏という時代錯誤な選択が、まるで凋落のフジテレビを見るようでとても残念。

 トドメが「理屈抜きにカッコいいスタイル」。プロダクトデザインの花形として、徹底したコンセプト作りから始めるはずの自動車デザインに対し、作り手自身が「理屈抜き」と言い放つことが、一体どういうことか分かっているんだろうか?


 
 発表会では、デザイン部に訪れた章男社長が候補案を見て「この中でいちばんカムリらしくないのを選べばいいんだよね?」などと発したことが誇らしげに語られる始末。え、クルマのデザインってそういう次元の話なの?

 新しいカムリは、車台からすべて新設計で望める貴重な機会だったそう。けれども、ゼロから始められる状況でこそ、本来の実力やセンスが問われる。何でもできるからこそ、その仕事内容が注視される。

 TNGA思想による走りの性能はともかく、勢い余ってズレまくったコンセプトや、ラインが交錯する煩雑なスタイルが、どうやらその回答らしい。この途方もない軽さは一体どこから来るんだろう?

 これでもって「セダンの復権」などと構えるのは、中身のない大口を連発するどこかの政権みたいで、実に虚しいんである。

(17/09/26 すぎもとたかよし)


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