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コラム&レビュー

自動車雑誌を斬る!:提案は難しい?

 
 具体的な提案がほとんどみられないのが残念だなあ、と。

いま売りの『ベストカー・プラス』はマツダ特集。同社の歴史、目覚ましい業績回復を果たした新商品群の開発経緯、ロードスターを筆頭とするそれら新商品の検証などなど、とにかく元気いっぱいのマツダを多角的に語るものだ。


 だた、過去の名車をランキングしたり、現行車をあれこれ語るのは通常見かける記事であって、まあ想定内だ。でも、今回はせっかく1社に絞った特集なのだし、できれば今後の展開についても大いに盛り上げたいところなんである。

 その点、「マツダはいまのままでいいのか」という記事で3人の評論家諸氏が執筆しているんだけど、残念ながら今後の展開への提案としてはいささか物足りないのがちょっと。

 国沢氏は、たとえばロードスターが国内に2リッターを用意しないことを挙げ、そういう走り方向が不足であって満点とは言えないのに、「うちのクルマはいいでしょ」とメーカー自ら連呼するのは興醒めだと。

 伏木氏は、相変わらず隙間のない長文で難しい表現を続けるけれど、読み終わってみれば現状をなぞっているだけで、結局氏の新しい考えは見当たらない。

 唯一、清水氏は現状を満点以上としながらも、個人的な希望としてデミオのロングホイールベース版ワゴンという具体的な提案を用意した。

 この特集に限った話じゃなく、メーカーがこれからどういう商品展開を行うべきかといった話はほとんど見られない。あったとしても、スポーツモデルだの高性能モデルだの、クルマ好きにありがちな狭い範囲の「希望」がほとんどだったりする。

 では、このブログをお読みいただいている皆さんは、今後のマツダに対してどんな商品展開を希望するだろうか?


 
 個人的な意見だけど、たとえばエンジン。苦労の末、劇的に燃焼効率を上げても、それだけでは商品性を得られないことがわかったスカイアクティブG。ここは順当に過給器付にシフトして付加価値を上げ、これをガソリンエンジンの標準にしてはどうかと思う。

 好調なディーゼルとの住み分けは、相応の価格差によるグレード分けで行けるかと。もちろん、ターボのアシストと同時に、次世代スカイアクティブの超高効率燃焼による省燃費を大きくアピールすることは従来と同じだ。

 デザインについては「SHINARI」の次ステージなわけだけど、魂動デザインの本質がエモーショナル方向であるなら、そこに端正さを採り入れてはどうだろう。

 僕はSHINARIは素直にいいと思うけれど、特徴的なキャラクターラインは、使い方を誤ると息の短い造形に陥ってしまうとも思っている。若干間延びしたアクセラや逆に窮屈なデミオはその例で、このラインのために長い期間生き残るデザインにはなっていないと僕は感じている。

 一方、バブル期の「ときめきのデザイン」がある程度成功したように、曲面重視の流麗さと端正さは両立する。であれば、魂動デザインの中でもしっかり表現できるんじゃないかと。

 モデル展開としては、来るフランクフルトショーでCX-9を想定させる「KOERU」が出るとすれば、あとはスペース重視のコンパクトがあればと思う。これは清水氏が提案したデミオのワゴンに近いけれど、まんまステーションワゴンではユーザーを限定してしまうので、「広いハッチバック」的な設定がいいかと。

 現行ベリーサは高級路線を目指したけれど、新商品群はすべて高い質感を達成しているので、仮に後継を作るのであればここはスペース追求が面白い。いまのマツダなら、少なくともポルテやソリオみたいなことにはならないでしょう。

 さて、もう10月には東京モーターショーもあるし、実際にはマツダを含めた各メーカーとも色々な部分で「次の一手」を進めているわけだけど、しかしそういう実勢に間に合うか否かは別として、プロの評論家による具体的な提案なり提言はやっぱり必要なんだと思う。

 それは責任云々だけじゃなくて、基本的に受け身姿勢ができあがってしまっている僕らユーザーへの啓蒙の意味もあるんである。

(15/09/04 すぎもとたかよし)

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