|
あけましておめでとうございます。今年も細々ですがライター業を続けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
で、新年最初のN-BOXスラッシュ。まあ、次のステップへの予告と思えばいいのかもしれない。
もともとNシリーズは、軽クオリティの底上げをするべく「らしくない」内外装をもって始まったけれど、より徹底した装飾を施すスラッシュでは、それに伴ってさらなる質感向上を狙ったみたいだ。
ツートンのルーフにはリアピラーの金属パーツで独自の素材感を出し、巷に溢れるツートンルーフと差別化を図った。そして、5パターンを揃えたインテリアでは、それぞれのテーマカラーのパーツを各部に「盛る」ことで手抜き感がないし、8カ所に散りばめたスピーカーも装飾に一役買っている。
そんなこんなでガチャガチャしそうな内外装が意外にスッキリまとまったのは、おそらくNシリーズとしてのコンセプトがうまく働いたところで、その点しっかりコントロールができているんじゃないかと。
なんだけど、一方、商品企画自体としては根本的に?かと。
そもそも、時流に乗ってスーパーハイトワゴンとしたN-BOXの屋根を切るっていうのは、まずいかがなものかと。いや、そこが面白いんだと言いたいんだろうけど、10センチほどカットしたところで相変わらずONEやWGNと似たような背高だったりするわけで、だったら「ふつう」の高さのモデルを作り込む方が先だろう、なんて思うわけである。
|
|
そして、充実させた装備で質感を上げたインテリアのためか、車両価格はついに176万円(ターボモデル)となった。これは兄貴分のフィットならハイブリッド、そのライバルのデミオなら好評のディーゼルとほぼ同一価格である。
いやいやそれこそクラスレス、小さな高級車でしょ、なんて声も聞こえてきそうだけど、じゃあ、たとえば内装がフィットやデミオと同水準なのかと言えば、残念ながらそこまでじゃあないし、もちろんエンジンはHVでもディーゼルでもなく、半分以下の排気量による走りは軽以外の何者でもない。
他のクラスに比べ、いつまで経っても「最新の軽は最良の軽」という傾向が拭えないのは、規格内での開発によろしくない縛りがついて回るからだと僕は思っている。今度はこんなによくなりましたと言っても、次のモデルでは簡単にそれを刷新してしまうだけまだまだ上が空いている。わずか1、2世代前の走りや内外装が、いとも簡単に陳腐化するのはそのためだ。
4月からの増税に対して、たとえば自主規制の撤廃など、各メーカーがどういう対抗措置を考えているのかはわからないけれど、今回現状維持のスラッシュは、頑張った分だけ軽の歪みを明らかにしてしまったと。こと上昇志向の場合、軽はクオリティ、価格、走り(排気量)のバランスがどうやってもとれないんである。
だったらそれを明らかにし、じゃあ次は軽規格をどう乗り越えようか、たとえば1年後に大きなエンジンを追加しようか、なんてきっかけのクルマと考えれば、これはこれでいいのかもしれないとは思うけれど、果たしてそれはどうなのか?
あ、日本専用車なのに何でアメリカテイスト?という問題は別途あったりする。いや、これがホンダ伝統のバタ臭さだとは理解できるけれど、軽にハワイだのテネシーだの言ってもちょっとね。おまけに、開発者が渡米してカスタムカーの「勉強」をしたっていうのは、さすがに根本的なスタート地点を間違えているんじゃないかな。
(15/01/01 すぎもとたかよし)
「日本の自動車評論を斬る! すぎもとたかよしのブログ」へ
|