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コラム&レビュー

クルマのまわりで:産業界としての自工会

 
 夏の業務曜日をシフトするという自工会の判断は極めて早かったし、内容も妥当だと思う。

 浜岡原発停止要請に際しては、ニガ虫をつぶしたような顔の中部電力社長だけじゃなくて、経団連会長までが「民主党はブラックボックス」だの「なぜ浜岡だけ」だのと批判ばかりを露わにしていた。

 実はその時点からトヨタは「夏に停電になるようなことはないだろう」と言っていたし、スズキは「社員の安全を考えれば、むしろ評価する」とコメントしていたんである。

 日本の基幹産業である自動車会社のトップと経団連会長のコメントに、なんでこんなズレがあるのかが実に不思議なところだけど、結局はこういうときに器の違いが出てしまうのかもしれない。

 もちろん、いまや報道とは言えないレベルまで劣化したTVニュースでは「そうは言っても影響は大きいですよねえ」などと、とりあえず批判方向だったけれど。

 今回僕がいいなと思ったのは、自工会の決定について、他の産業もフォローしてくれればいいという考え方だ。誰の発案か分からないけれど、自動車業界という自身の立場をよくわきまえているし、とても柔軟だ。ここも経団連会長との落差が浮き彫りになったところかも。


 
 まあ、裏を返せば休日以外の「休業」はできません、ということなんだろうけど、現在の厳しい生産状況を考えれば可能な限り稼動させたいのは無理もない。平日の休業は管理部門に影響があるとの話もあるけど、まあ、あくまでも3カ月間の話だし。

 これからフォロアーが出るか否かはまだ分からないし、原発保有道府県などはいきなり主体性をなくしたように「停止中の炉の再開をどうしたらいいんだ」と騒いでいるので、まだまだ状況は不透明だ。

 ただ、結局はこの極東の国が世界最悪レベルの事故を起こし、収束行程表を示したいまでも毎日大気と海に放射能物質を漏らし続け、仮に収束しても事後処理すら想定できないという事実を、どれだけリアリティを持って考えられるのか、ということなのかもしれない。

 実は停止中の各種火力や揚力発電を使えば夏期の需要も十分賄えるという話はともかく、直近の課題に対し、柔軟かつ現実的な提案をいち早く提示したことは、クルマファンとしても歓迎したい。もちろん、部品メーカーなど、すそ野の広さを考えれば相応の調整が不可欠なんだろうけど、産業の大きさを考えれば、ある種の政治的判断は必要だし。

 ま、商品も毎回このくらい同感できるといいんだけどね。

(11/05/22 すぎもとたかよし)

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