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これは、もしかしたら最小のコストで最大の効果をいかに得ることができるか、がテーマだったのかもしれない。
あんまり話題にならないけど、サイドとリアのウインドウが基本的に流用というのはデザイン上かなりのハンディキャップだ。しかも、3列ミニバンみたいな、ある種の“定型ボディ”となればさらに難易度が上がる。
もちろん、近年のマツダ車が自社のコンセプトカーに沿ってデザインされ、近作のアクセラではその傾向がより強まっていることは周知のとおりだ。
だから、最新作のプレマシーがNAGAREデザインの要素をついにまんま取り入れてしまったのはある意味予想できたことなんだけれど、でも、もしかしたらその理由のうちの何割かは「最小で最大の効果」にあるんじゃないかと。
たとえば大口の5角形グリルや、すわアウディA5?なスポイラーから始まるフロントフェンダーの巨大なフレアは、ここんところのマツダ車の公式そのものだけど、たぶんそれだけじゃ「足りなかった」んじゃないかと。
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実際、例のボディサイドのNAGAREラインがないことを想像すると、流用したサイドグラフィックによる負の影響がかなり強いことに気づく。あれ?マイナーチェンジ、みたいな。
さらに、そのボディサイドをよくみると、実はスパッとこれまた最近のマツダっぽいラインが一本入ってるんである。このあたりはそりゃもう十分仕上げに時間をかけたんだろうけど、でもどうにもこの2種類のラインは異質だ。ケンカこそしていないけれど、少なくとも調和もとれていない。つまり、あくまで今回のNAGAREラインは演出重視なんじゃないかと。
もちろん、このラインを受け止めるようにリアランプは低く横型に変更されて「取って付けたんじゃないですから」という工夫も感じられるし、結果的にはその処理が話題になっているんだから「最大の効果」は成功と言えるんだとは思う。
ただ、個人的にはやっぱり中途半端に思えるかな。何だこれ?っていう変わり種にはなっているけど、1台のクルマを構成する要素にはなり得てないと。ラインを美しく強調させた広報用の写真に比べると、実車では意外に目立たないから余計にそう感じてしまう。意表を付くラインだとしても、たとえばアルファのGTVまで徹底すればクルマの個性になるけど、先代ステップワゴンじゃ笑い話になっちゃうように。
この微妙な感じが「最小で最大」を狙った結果なのか、あるいはビアンテの低迷に恐れをなしたための若干の躊躇なのか。いろいろな謎は、次のオールニューモデルを見れば分かるんだと思う。たとえば新しいデミオとか。
(10/07/13 すぎもとたかよし)
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