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徳大寺有恒氏の「間違いだらけ」新刊が出ましたね。エコカー限定の変則版だけど。
最近、すっかり“懐かし話”が多くなった巨匠。若い評論家が台頭する中、この新しい「間違いだらけ」は果たしてどうなんだと思う方も多いのでは?
で、色々な意見はあると思うけど、読後、僕はいまでも巨匠の「間違いだらけ」はアリだと感じたんである。なぜって、ここでは明快な「批評」が生きていたから。
たとえば、「ハイブリッドだけじゃダメだ」「10.15モードには大罪がある」「車検制度は見直せ」「軽自動車規格はおかしい」「ハイブリッドVSディーゼルは馬鹿げてる」「ロングライフも立派なエコ」「トヨタビジネスの失敗」
たぶん、このブログを読んでいただいている方にとっては当然のことばかりだろうし、軽自動車規格や車検、ロングライフなんかは僕もすでに記事にしている。だからそれ自体は決して目新しいものじゃない。けれども、じゃあいまこれだけのことを明快に雑誌や書籍で書いている評論家やジャーナリストがどれだけいるのか? っていうと、実はほとんどいないことに改めて気付く。ましてや、こんなにまとめて・・・。
以前からそうだったけれど、この不況になってメディアによるメーカー応援歌はますます顕著になった。いまやほとんどの雑誌が、趣向の違いこそあれ応援記事のオンパレードだ。いまさら批評なんて青臭い、なんて雰囲気プンプンである。
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あの“街の評論家”テリー伊藤氏さえ、「この5年間はメーカーがユーザーに媚びたクルマを作っても許す」みたいな、ほとんど思考停止なことを書いているくらいだ。まるでこの数十年間、メーカーは媚びたクルマ作りをしてこなかったみたいに。
小沢幹事長が白だの黒だのという意味不明な話を、なぜかマスコミが連日トップニュースにして見えにくくなっているけれど、実際には政権交代で色々なところが変わり始めている。恐らくその多くは50,60年間の前政権時に「青臭い」とされたことが基本じゃないかと僕は感じている。で、青臭いことを実行するからこそ現実的に物事が変わるんじゃないかと。
そう考えれば最近の自動車評論は時勢と真逆もいいところなんだけど、このタイミングで「間違い」を指摘したのは、だからとても意義深いと思う。現状肯定に躍起になるしたり顔達が「何をいまさら」と言いそうな青臭い内容だということも含めてね。
ただ、それをやったのが結局は巨匠だった、とうのは逆に言うと残念なのかな。良識ある評論家なら同じ考えを持っているだろうけど、ただ考えているのと世の中に公表するのでは天と地ほど違うもの。
まあ、強いて言えば後半のエコカー30台批評が前半ほど納得感がなかったのが残念かな。
そうそう、雑誌「東洋経済」が自動車業界特集を組んでいるけど、単に現状認識ならこうした経済誌の方がよっぽど面白いっていうのも問題かも。評論家でもない大学教授がしっかり軽自動車規格見直しを提言してる、とかね。
(10/02/01 すぎもとたかよし)
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