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■新車心象風景:三菱・グランディス
■三菱 グランディス■
 (2003年5月14日発売)

◆主要諸元(エレガンス-X)
 最大出力:165PS/6000rpm・22.1kgm/4000rpm
 外寸(o):全長×全幅×全高=4755×1795×1655
 東京地区標準価格:272.3万円

 日産の向こうをはってディザーキャンペーンを展開、大々的にデビューを果たした新型グランディスは、その甲斐あってか結構な売れっぷりをみせているようだ。なんで鉄腕アトムとタイアップ?という謎はこの際おいといて、財政再建真っ最中の三菱にとっちゃあ、コルトと同じくらい重要なコマなわけで、取りあえずホッとしているんだと想像する。が、コルトもそうだったけど、どうも僕はしっくり来ないんである。え、それはなぜ?
 まあ、一口で言ってしまえば簡単な話で、クルマのデザインさえそこそこ面白ければ、それで自動車メーカーは成り立つのかい?ということ。

いま三菱は?
 フルライン・ターボだのフルライン・カンガルーバンパーだの、とにかく売れるとなればみさかいなくメチャクチャをやってのけて来た三菱は、恐らくその方向性の欠如が大きな原因で現在の財政危機を招いてしまったんだと僕は認識している。だって、いくらパジェロがブレイクしたからって、リッターカーのパジェロや軽のパジェロを本当に作っちゃうようじゃダメでしょ、やっぱり。
 で、ダイムラー・クライスラーの資本を受け入れ、ターンアラウンドなる再建計画を遂行中の三菱だけど、じゃあそういうメチャクチャな体質がどう変わったのよ?といっても僕には全然分からない。変わったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。「ドイツ基準」とか「まじめ」とか色々言うけれど、実際中で何やってるんだか見当もつかないんである。

 けれども、同様に外資を受け入れた日産なんかは実に分かりやすい。デザイン本部長を役員に迎えるなど、デザイン重視という面では同じだけど、それはクルマだけに止まらず、ショウルームやモーターショウブースのデザインからパンフレットなどを含めたステーショナリーまで及ぶし、ロンドンに大きなデザインハウスを立ち上げるなど、全社的にデザインというものをしっかり考えて行こうという意図が実に明快ではっきりしているからだ。

デザイナー頼み
 これに比べると、三菱はオリビエ・ブーレイ氏という才能あるデザイナーを迎えたのはいいとして、単に彼が好き放題にとんがった絵を描いているだけのようにしか見えないんである。だからグランディスはたしかに面白いかたちをしているけれど、その商品コンセプトが会社全体としてどういう位置づけをされているかも分からないし、もっと言えば三菱車である必然性すらよく分からない。じゃあ何だよ、たったひとりの優秀なデザイナーが来れば自動車会社って成り立っちゃうわけ?と冒頭の疑問にブチ当たるんである。
 たしかにハード的に世界中が均一化してきたいま、各メーカーが一番違いを出そうとしているのはデザイン面なんだろうし、それは間違ってないと僕も思う。でもね、歴史的背景も含めて、その会社が何を考え、どこを目指しているのかが分からなくちゃ、単なるスケッチ大会で終わりじゃあないか。


 たとえば僕が三菱の現状についてどのくらい理解しているかなんてことは、メディアの取り扱い方ひとつなんだとは思う。カルロス・ゴーン氏のようなカリスマ的存在がいるといないでは、そりゃあ随分と違うだろう。けれども、これまでの三菱のやってきたことを考えれば、少なくとも僕はいまの状況を肯定的に見るのはかなり難しいんである。


(03/07/07 すぎもとたかよし)

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