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■クルマのまわりで「ニッポンのF1グランプリ」

はじめに
 ああまたか、と、そう思ったんである。
 「F1スーパーラン IN ODAIBA」
 日本グランプリの冠スポンサーであるフジテレビジョン新社屋の真ん前に特設コースを造り、内外ドライバーを招いてのデモ走行。そして、レースとは無縁のタレントをまじえての実況解説。
 毎年日本グランプリの直前には何かしらのお祭り騒ぎがあるけれど、今年もまた「趣向を凝らした」大イベントである。毎年のこととはいえ、このトンチンカンな企画の数々、もういい加減にしたらどうなんだろう。

スポーツじゃない?
 自著にも書いたけれど、F1に限らず日本のモータースポーツは、そのマシンの性能やドライバーの質の高さとは裏腹に、こと認知度ときたらもうサイテーだ。いや、誰も知らないなんてことはないけれど、目立って騒いでいるのはもっぱら「走り大好き」系の若者が大半で、まあ一口で言えば子供のお祭り騒ぎなんである。

 たとえばプロ野球や大相撲、あるいはサッカーのようにメジャーな存在にならない理由はきっといくつかあるんだろうけど、そのうちの大きな部分を占めるのは、主催者とマスコミ、メディアの意識の低さだと僕は思っている。秋風が吹こうが雨が降ろうが平気でハイレグのキャンギャルを立たせる主催者がいれば、それをことさらクローズアップするメディアがある。高度な運転といえばドリフトに尽きると言い切るオチャラケたドライバーがいれば、そうした記事を満載した雑誌が書店に溢れる。日本のモータースポーツが「スポーツ」ではなく、「暴走族のお遊び」程度の認識しか得られないのは、このあたりに元凶があるのではないか、ということだ。

お祭り大好き
 実は、そんな中でもF1中継だけはそこそこ大人の鑑賞に耐え得る番組作りがされてきたのだけど、ここ数年はいよいよ気の抜けない状況になってきてしまった。
 たとえば先のようなオチャラケドライバーを連れてくるだけじゃなく、元女子バレーボール選手だの元横綱だの、何の脈絡もないゲストを呼んできてはどうでもいい話にふける。今年のモナコグランプリでは、いまやワケの分からない存在と化した自局の元女子アナを呼ぶなどという愚行も見せてくれた。そしていよいよ日本グランプリ直前のお祭り騒ぎとなる。
 ここ何年かは「前夜祭」と称して、これまた全く関係ないタレントを呼んでの大イベントだった。現役ドライバーを呼んでの催しには反対しないけれど、それがどうしてあのようなバカ騒ぎになるのか?F1の素晴らしさをより多くの人達に知ってもらいたいため、などと言うならとんだ大間違いだ。本当にそう思うなら、全戦を生中継する方がよっぽど効果的じゃないか。

内輪受けの世界
 この催しについてはふたつの点で僕には信じがたいものがある。
 ひとつは、世界的スポーツであるF1を、「お台場」という日本のごく一部の流行りもの好きだけに認知されたスポットに呼んできてしまおうという、もう理解できないくらい視野の狭い貧困な発想だ。この催しの企画者にかかれば、お笑いタレントのイベント会場もトレンディードラマの舞台も、F1のサーキットもみんな同じなんだろう。
 日本のマスコミは、いかなる世界でも、その頂点に立つ人間をもてはやしては随分と低い自分達の身の丈まで引きずり落としてくるのが得意だけど、このイベントも全くもってその好例だ。500メートルのサーキットを造ろうなんて発想はまさにワイドショー感覚以外の何ものでもないじゃないか!

 もうひとつは状況把握の欠落だろう。
 周知のとおり、いまは世界中がテロと戦争に直面しているんである。アメリカグランプリにはあのミハエル・シューマッハが一時出場を拒否したというし、一部ではこの日本グランプリもテロの標的になるとさえ言われており、まさに厳戒態勢の中での開催なんである。
 そうした中でのこの騒ぎは一体どういうことなのか?いや、このイベントが暗く沈んだいまの空気を吹き飛ばす力と価値を持っているような内容だというなら話は別だけど、どう見たって思い付きのお気楽企画じゃないか。さすがにTV放映は自粛したけれど、だいたい放映できないようなイベントなら、それこそサッサと中止するべきだろうに。

 日本のメディア、とりわけTVのそれは今回のテロ事件自体に対しても、かなりズレた報道をしてきたけれど、その上にこんなバカげたイベントを企画し実行するなど、もう開いた口がふさがらないどころじゃない。
 僕はむやみやたらな「自粛指向」は大嫌いだけど、しかし今回はグランプリそのものが危ういというレベルなのであって、状況は極めて深刻なんである。その空気が読めない、その温度が感じられない、あるいは見ようとしない。そういうメディアが冠スポンサーをつとめる。それがニッポンのF1グランプリの確かな一面なんである。
 

(01/10/10 すぎもとたかよし)

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