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■クルマのまわりで「日産の軽市場参入について」

ふたつの疑問
 少し古い話になりますが、新聞によると近い将来日産が軽自動車市場に参入するそうですね。軽の場合、車種ごとの販売台数はあまり目にすることはないんですけど、1位を独走するワゴンRなどは、カローラやヴィッツと同等かそれ以上を売ることも珍しくないようで、現在の軽はかなりオイシイ市場なのはたしかなようです。
 けれども、僕は今回の日産の参入に対してあまりシックリ来ないんですね。いや、日産がマーチより小さなボトムカーを作るのはいいと思うんですけど、それが「軽」だということが何とも安易で、工夫がないと思えるんです。
 その理由はふたつあります。

中途半端な規格
 まず軽の規格について。
 ご存知のとおり、今の軽自動車は戦後の国民車構想の「現行型」で、つまり外寸も排気量も全て「お上」が決めた規格なんですが、このうち僕は660tという排気量に疑問を持っているのです。
 この程高速道路での最高速度が100q/hに引き上げられたことからも分かるとおり、今の軽は500〜550t時代から比べると、走行性能は飛躍的に向上しています。まさに100q/h巡行も苦ではありません。が、苦ではないけれど、また余裕もないのです。それは常時エンジンを4000回転前後回さなければならないからで、騒音や振動面も不利ですが、とりわけ燃費に大きく影響します。もし、あと500〜1000回転でも下がれば、この点で相当な改善が見込める筈です。もちろん、街中でも同様で、決して回りの流れに遅れるわけではないのですが、そのためには、いつの間にかスロットルをかなり大きく開けることが多くなり、結果思っている以上に燃費が伸びないのです。
 たしかに、実用燃費の絶対値自体は「悪い」とは言えませんが、ひとクラス上のヴィッツやマーチと同等か、場面によって下回るようでは、そもそもの「軽」という規格の優位性自体が疑問になります。このあたりは僕がとやかく言わなくても、当の軽メーカーが一番承知していて、3年前の規格改正時にはメーカー自ら「排気量拡大」(800tとのこと)を希望していたそうですが、リッターカークラスとの競合を恐れた大手メーカー(というと2社しかないけど)が反発し、肝心の監督官庁も何を考えたのか「排気量は既存のまま」という決定を下してしまいました。
 僕は個人的に今の軽についてサイズ的には問題ないと思ってます。それどころか、現行サイズで小型車並の衝突安全性を持つ日本の軽技術は世界に誇れるとさえ感じています。ただし、排気量については先述の理由から、やはり800t程度は欲しいと考えています。現行の日本オリジナルの小さなボディに、800t前後のエンジンを載せれば、軽はそれこそ世界に通用する先進的コンパクトカーになると思っているのです。

何で軽だけ?
 もうひとつは軽の優遇制度。
 上記と同様、国民車構想の名残として軽は税金を中心に特別待遇を受けています。地方などで2台目、3台目の軽が生活の足として根付いているのは、こうした待遇による維持費の安さが利いているのでしょう。けれども僕は「だから軽は貴重な存在なんだ」などとは思いません。ある意味逆ですね。即ち「軽の税金が安いのではなくて、小型車以上の税金が高すぎるのだ」ということです。主要・基幹産業として、膨大な数のクルマを作り出しているこの国で、クルマを買うこと、クルマを使うことに、これほど過大な負担が掛かるなんていうのは、どこかが歪んでいるとしか僕には思えません。
 ということで、行政は軽程度の税負担が国民のためだと思うのなら、全てのカテゴリーのクルマについても、限りなくこれに近づけるべきだというのが僕の考えです。

メーカーの心意気
 で、話はここで元に戻るんですが、べつに僕がここで挙げた事柄だけでなく、今の軽の規格やその取り決め方には少なからず問題があると思うのです。そして、そんなことはメーカー自身が一番よく知っている筈なんです。にも関わらず、大手メーカーでもある日産が、創業以来初めて本格的にミニカーに進出しようというとき、何の提案も発言もなく、ただただ既存の「軽」市場に乗って商売しようというその姿勢が僕にはどうにも納得できないワケです。なぜ排気量規制撤廃くらいのことが言えないのか?どうして偏った優遇制度の見直し程度の提案をしないのか?
 そりゃあ、2000年決算で当期利益が計上されたところで、日産の経営が火の車であることに変わりはないでしょう。だから手っ取り早く既存の市場で利益を上げようという気持ちも分かります。ましてや商品がスズキのOEMだというのですから余程のことなんでしょう。
 けれども、というか、だからこそ日産にはもう少し先を見た長期的な経営方針を見せて欲しいと僕は思うのです。実際トヨタはダイハツと協力して700〜800tのコンパクトカーを開発中と言われています。これが完成となれば、またしてもトヨタに国産メーカーとしてのリーダーシップを見せつけられることになるとも考えられます。
 「日産が変わった」というのは、何も新しいシーマやプリメーラのデザインが多少進歩的になる、ということばかりじゃないのではと僕は思うのですが?

(01/02/23 すぎもとたかよし)

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