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■クルマのまわりで「ディーゼル車はNO? YES?」

はじめに
 先日、マツダがヨーロッパ向けの輸出車に新開発のディーゼルエンジンを載せるという新聞記事を目にした。ああ、多分こういう流れになるんだろうナ、と思っていたけれど、マツダのこの発表は僕の予想より少々早かった。で、今回の話はそのディーゼル車についてなんである。
 ズバリ、ディーゼル車はNO? YES?

ヨーロッパの現状
 マツダがなぜディーゼル車を導入するのかといえば話は簡単で、「売れる」からに他ならない。もうご存知の方も多いと思うけれど、ここ数年ヨーロッパでのディーゼル車の普及率は上昇の一途をたどっていて、2000年においては比較的普及率の低いスイスでも10%弱、ドイツやイタリアでは30%を超え、普及の早いスペインやベルギー、オーストリアに至っては50%を優に超えているんである。そう、何と2台に1台がディーゼル車なのだ!
 なぜか? 理由はいくつかあるようだけど、まず燃料の軽油が安く、燃費が良いこと、つまりコスト安というのが一番。国によっては、これまでディーゼル車に課されていた特別税が廃止されたこともあるという。もうひとつは地球温暖化の原因とされるCO2の排出が、ガソリン車に比べて少ないと言われていること。これはドイツなど、とくに環境への関心が高い国で影響しているかもしれない。
 一方ではディーゼルエンジンのデメリット潰しという面もある。
 もっとも大きな改良は燃料の直噴化だろう。直噴のメリットは燃焼効率の向上だから、出力や燃費の更なる向上と、同時にCO2の減少も期待できる。加えてDOHCの導入や4バルブ化によってドライバビリティは著しく向上し、もともと高いトルク性能を持っていたディーゼルは、多くの場面でガソリン車を凌ぐパフォーマンスを示すようになった。
 残る問題はNOxとPMの排出だけど、最新のエンジンでは高効率の触媒によりかなりのクリーン化を果たしていると言われているし、今後2、3年の内には更に高性能のDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)が完成し、ほとんどガソリン車と差異のないレベルに達するとも言われているんである。
 まあ、つまりディーゼルは一長一短なんだけれど、とにかくその短所を徹底的に潰して行けば、より良いパワーユニットが完成すると考えているワケで、彼の地ではもう10年以上も前からこうした試みを進めてきたということだ。

日本はどうなの?
 翻ってこの日本ではどうだ。
 あの石原都知事が浮遊微粒子の入ったペットボトルをTVカメラの前にかざし、尼崎公害訴訟では原告が勝訴となり、ディーゼルは完全に「悪玉」「日陰者」ということがすっかり世論として固まってしまった。実は東京都のディーゼルNO運動はDPFの早期開発を促すなど、ケッコウ筋がとおっているのだけど、その詳細な内容をはじめ、ディーゼルの長所・短所についてしっかり語られることがないので、とにかく「ディーゼルはダメだ」というイメージだけがもの凄い勢いで広がってしまったんである。
 ただ、その原因はもちろんメーカーにもある。だって、日本のメーカーは商用にしろ乗用にしろ、新しいディーゼルエンジンの研究開発に本気で取り組んできたという話は聞いたことがないし、実際いま路上を走るディーゼル車が吐き出す黒煙(スス)の量は尋常じゃない。現代の、いや、ここ10年20年の日本の自動車開発技術の向上を見れば、ヨーロッパがここ数年行ってきたことと同じか、それ以上の成果を実現できた筈だろうに。

売れないなら・・・
 では、東京都がディーゼルNO運動を展開し、それが国の行政をも動かそうとしている中、当の自動車メーカーは何をしてきたのか?
 平成15年から一部のディーゼル車の使用を規制するという条例を前に、トヨタなどが高効率DPFの開発を急ぎ、あとは比較的ディーゼル需要の多い大型クロカンに大排気量の直噴型エンジンを数基載せたという話がせいぜいだ。そう、日本のユーザーに、あるいは行政に対し、ディーゼルの長所なり可能性を積極的にアピールするようなコトは全くなかったんである。それどころか、量販価格帯の乗用車にはディーゼルの設定すら行わず、とにかくディーゼルという言葉をタブーにしているとしか思えない有り様じゃないか。事実、マツダはモデルチェンジ時に設定されていたカペラのディーゼル版を、いつの間にやらカタログから落としてしまったのをご存知か?
 つまり、メーカーは「ディーゼルは悪玉」という世論に迎合・同調し、その結果、ユーザーはますます悪玉論を強く信じるようになっていったのである。
 ところが、だ。

売れるのなら・・・
 ところがどうだ。冒頭に記したとおり、そのマツダが新開発ディーゼルをヨーロッパに投入するというじゃないか。いや、実はこれはマツダだけじゃあないのだ。これまでプジョーからディーゼルエンジンの供給を受けていたトヨタは近々自社開発をすると言うし、同様にいすゞの手を借りていたホンダも自前で作ることを公にしたではないか。もちろん、これらはヨーロッパで売られるクルマについての話だ。
 もう僕の言いたいことはお分かりだろう。
 自分の国でありながら、世論が反対を向いていれば何の努力もせずに沈黙を守り続ける。けれども、彼の地でユーザーが受け入れると知るや資金を惜しむことなく新しいエンジンまで作ってしまう。いつものことながら、このポリシーのなさ、社会責任性の欠如、ひたすら商売第一の姿勢。
 排ガスによる大気への影響などというものは、それぞれの国の「認識」によってどうこうする類の話じゃあない。どこの国で走ろうが、同じクルマなら環境に与える影響も全く同じなのだ。だから、日本のメーカーがヨーロッパでディーゼルを走らせるのであれば、それを日本で売らないのはおかしい。そのエンジンが本当に新しい技術を取り入れた新世代のものであるならなおさらだ。もちろん、その時には日本人の持っているディーゼル悪玉論の修正を行わなくてはならないけれど、それこそメーカーがこれまで怠ってきたことじゃないか。
 トヨタ、日産、ホンダ、マツダ。社会的責任を持つ大企業であるあなた達に聞きたい。
 「ディーゼル車はNOなの? YESなの?」

(01/06/14 すぎもとたかよし)

日本の自動車評論を斬る!
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