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■新車心象風景:日産・シーマ
■日産 シーマ
 (2001年1月12日発売)

■主要諸元
 排気量:3000〜4500t
 最大出力:
  280PS/6000rpm 46.0kgm/3600rpm(4500t)
 外寸(o):
   全長×全幅×全高=4995×1845×1490(2WD)
 東京地区標準価格:492〜695万円



新しい空気
 工場閉鎖をメインとした大リストラ策で、2001年3月期決算では一応黒字に転換した日産だけど、本当の意味での「復活」を果たすためには、当たり前の話だけど売れるクルマを作り続けるしかないんである。そんな中、ブルーバード・シルフィ、X-トレイルと、「お値打ち商品」で一時的にお茶を濁してきた日産が、いよいよ本格的に「変化」を目に見えるかたちで世に問うてきたのが今回取り上げるシーマであり、また新しいプリメーラであるようだ。
 新生日産車のデザインに、トゥインゴやルーテシアで有名なルノーのチーフデザイナーであるパトリック・ルケマン氏がどこまで口を出しているかは分からないけれど、いすゞから中村史郎氏というトップデザイナーをヘッドハンティングしたことからも分かるとおり、今後の日産は「デザイン」で勝負を挑むらしい。このシーマに関して言えば、ルノーとの提携前から開発が始まっていたというから、彼の意見はそれ程大きく反映されていないのだろうけど、TVでのCFには中村氏自らが出演したりして話題になっていた。
 で、このシーマ、売れるかどうか、少なくとも月販目標の1200台をこの先ずっとキープできるか否か、僕は少々不安なんである。そう、理由はまさにその「デザイン」にある。

名前が大切
 周知のとおり、今回のシーマは実質インフィニティQ45の後継車で、メイン市場となるであろう北米ではこれまでどうり「インフィニティ」ブランドとして売られる。一方、国内市場で大失敗を喫した名前を使うのはもうイヤだ、エンギが悪いということで、既に知名度のある別ネームにすり替えてしまった国内版は、あのマキシマがセフィーロになったのと全く同じやり方。よって、マキシマがセフィーロになっても実物は全くもってマキシマそのものであったように、シーマとなったインフィニティもまたQ45そのものなんである。
 で、その初代インフィニティが商業的に失敗したのは、えらくデカい七宝焼を用いたグリルレスのフロントフェイスや、漆塗りを施したというインストルパネルなど、そのジャパン・オリジナルな発想が受け入れられなかったことと、ライバルが行った徹底的なNHV対策よりも、「走り」の良さを選択したその商品企画が裏目に出たからだと言われている。
 けれども、だ。そのインフィニティ=シーマは、またしてもその「走り」をウリにして再登場したではないか。

今度こそ?
 たしかに評判の悪かったフロントフェイスには大きなグリルが付いたし、インストルパネルも奇をてらうことなく独自性を出そうとしているのは分かる。だから、初代のネガティブな面の半分は解決したのかもしれない。
 けれども、力(フォース)のキャッチコピーのもと、「高級感」よりも「走りの良さ」を具現化したエクステリアデザインは、そのなめらかなルーフラインを含めて初代Q45に通じるところが大きい。仮想敵であろう新型セルシオが、相も変わらず保守本流を突っ走る中、だからシーマは10年前の初代Q45とセルシオの戦いに、もう一度チャレンジしようとしているとしか思えないんである。それは、日産という会社の性格上必然だったのか、それとも真っ向意識して行ったことなのかは分からないのだけれども。
 で、僕の意見といえば、ずばりシーマ支持だ。そもそも僕は10年前もインフィニティを支持していた。理由は単純。オリジナリティを感じさせるクルマ作りに共感するからだ。
 たしかに初代セルシオが謳った「源流主義」は賞賛されるべき開発姿勢だったけれど、3代目となった新型にそれ以上の何かを見出すことはできないし、それどころか、初代にして和製メルセデスと陰口をたたかれたエクステリアは、この新型に至ってさらに加速してしまった。いや、実際フロントを先代Sクラス、リアを現行Eクラスに酷似させた新しいセルシオは、見ているこっちの方が恥ずかしくなるくらいなんである。
 ましてや、この新型を成功させるために、「先代はバブル崩壊の影響でコスト削減に目が向いてしまった」などと、いまさら平気な顔で口走ってしまうような開発者、いやメーカーを僕は到底支持することなどできない。
 もちろん、シーマとて完全ではない。マルチプロジェクターキセノンランプなどという細部にこだわるくらいなら、どうして自慢のトロイダルCVTを積極的に採用しないのか、なんていう疑問もあるし、スッキリしたオリジナルデザインのフロントフェイスを、どうしてメルセデス風の古色然としたものに変えてしまったのか、などという異議もある。それでも、ややウェッジを利かせた伸びやかなフォルム全体はやっぱり新鮮だし、絞り込まれたフロント回りの微妙な曲面や、丁寧に面取りされたリアランプ回りの造形はかなり思い切っていて、これまでの日本的高級車の香りから抜け出そうという思いは伝わってくる。
 そして、そうした「新鮮さ」というリスクあるボディを引っさげ、「走りの良さ」を前面に出して、再び10年前の雪辱を果たそうという姿勢に僕は共感するのである。


(すぎもとたかよし)

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