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●「富山発、わが道拓く」

 “富山とクルマ”と言えば、多くの読者は「光岡自動車」を想起するであろう。コーチビルダー(車体架装業者)からスタートし、50ccミニカーや愛好者向けクラシックカーなどを生産・販売、96年には「Zero1」が運輸省の型式認定を取得、日本で10番目の乗用車メーカーとなった光岡自動車である。

 マツダとフォード、日産とルノー、いすゞ・富士重工・スズキとGM、そして先月には三菱がダイムラー・クライスラーと提携、外資を交えた国内の自動車業界再編はいよいよ最終段階を迎えた。
 4月3日付日経産業新聞に、「三車三様、富山発、わが道拓く」という特集記事が掲載された。概要を紹介しよう。
 業界再編の喧燥とは無縁の自動車メーカー集積地が北陸にある。3月17日にクラシックタイプのミニバン「優雅」を発表した光岡自動車始め、3社が本社を置く富山市だ。生産規模はわずかだが、大手に真似のできない個性的なクルマづくりでファンを獲得、海外市場開拓に取り組む会社も出てきた。富山発のニッチメーカーが世界に挑もうとしている。

 3社とは、光岡に加え「タケオカ自動車工芸」と「コレッツコーポレーション」。いずれも光岡と深い関係にある。看板製造業を営む竹岡氏と光岡社長が地元の模型同好会で出会い、二人で一人乗り50ccミニカーの共同開発を始めたのが光岡の第一歩。今では生産台数は月間100台弱にまで成長、アジア地域への輸出も開始した。
 竹岡氏が社長を務めるタケオカも、北陸電力と共同で電気自動車「ミュー」を開発するなど独自のクルマ作りに挑戦。月産台数は20台弱で、ほとんど手作りに近いが、確実に利益を上げている。

 コレッツの多田社長は光岡から独立、98年から市販の軽自動車をベースにしたオリジナルカー「ヴィソ」の製造・販売を始めた。従業員は2人で年間生産台数は10台に満たないが、全国各地のディーラーと提携、昨年末には川崎市に専用ショールームを開いた。

 越中富山の自動車メーカーが描く将来像は“第二のホンダ”ではない。今後パイの拡大が見込めない国内の自動車市場にあって、“こだわり”や“環境”という切り口を武器に“オンリーワン”を目指す。

 日産も、マツダも、そして三菱も、“第二のトヨタ=フルラインメーカー”を目指し、トヨタの“物真似”に勤しんだ。結果、外資との提携を余儀なくされ、経営の主導権は外資に握られつつある。ホンダも“第二のトヨタ”を指向した時期は業績が低迷した。
 各社の再生は、“物真似”を脱皮し“オンリーワン”を目指す以外にない。工場閉鎖や人員削減などのリストラに加え、短期的にはシェアダウンという犠牲も払わねばならないだろう。それは、明確なブランドイメージとアイデンティティを持ったクルマの誕生には不可避の道でもある。

 外資系各社、そして富山の3メーカーの今後に、大いに期待しよう。

(00/04/08 わたなべあさお)

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