●『ADバン』こそ日産復興の原点!?
日経産業新聞9月28日付の「ヒット商品解剖」欄に、日産自動車の小型商用車「ADバン」が取り上げられている。概要以下のとおり。
昨年6月の新型発売以来、販売台数は月平均3000台強、シェアも40%台とライバル「カローラバン」を上回り快走を続けている。旧型のシェアは32〜3%程度とトヨタの後塵を拝してきたが、日産全体の国内販売シェアが20%弱に低迷する中、新型ADバンはトヨタを上回る数少ない車種として健闘している。
人気の秘密は、開発から生産まで手掛ける日産車体が、ユーザー調査をもとに商用車としての使いやすさを徹底的に追求した優れた商品力。
1.使い勝手の良い荷室スペース
・後輪の出っ張り部分を少なくするなど、積みやすさに配慮
2.ドライバーの乗りやすさに配慮したきめ細かな設計
・運転席を旧型より15mm高くして広い視界を確保
・最小回転半径4.6mと小回りが利く
・運転席周辺に収納ボックスやポケットを随所に配置
3.乗用車を上回る安全性能と環境対応
・衝突安全性で商用車初のAAA評価獲得(自動車事故対策センター)
・CNG(圧縮天然ガス)車が、運輸省の「超−低排出ガス車」に認定
これまで商用車については関心外だったため、Web上で両車種のスペックを比較すべくメーカーサイトにアクセスした。唖然!。両社とも商用車の情報を全くと言っていいほど載せていない。
で、検索サイトであれこれ探してみた結果、以下の点も確認できた。低排ガ ス車認定制度の2000年基準を75%低減したのは、ADバンとレオーネのみ。50%低減は、オデッセイなど23型式。25%低減はジムニーなど11型式。マツダ「ファミリアバン」もADバンのOEM車である。
4.必要十分な装備
・ADバン :4速AT、AM/FMラジオ、運転席パワーウィンドウ
・カローラバン:3速AT、AMラジオ、 パワーウィンドウ無し
5.専用外形デザイン
・ADバン :サニーベースだが、バン専用のオリジナルデザイン
・カローラバン:先代カローラセダンを踏襲
ユーザー調査はごく当たり前に行われているし、開発手法に取り立てて目新
しい点があったわけではあるまい。
日産車体の開発チームは、悪しき商用車イメージ(購入者と実際の運転者が違う場合も多く、競合時の決め手は価格。所詮儲からないクルマであり、デザインも装備も貧弱で良し)に流されることなく、極めて真面目に「商用車」の
あるべき姿を模索したに違いない。
庄ノ商品統括部主管が「商用車の場合、ユーザーは毎日、しかも一日中乗っているケースが少なくない。長時間運転しても疲れないのが非常に重要だ」と語るように、「商用」車である前に「車」なのである。
その追求の結果が、商用車でありながら、安全性能も、環境対応も普通の乗用車すら上回ったということであろう。
トヨタも、いずれカローラバンをモデルチェンジ、巻き返しを図ろうとするであろうが、果たしてこうした「商用車」作りが出来るであろうか。
ゴーン氏のもと、リバイバルに勤しむ日産であるが、華々しく伝わる「大胆な」諸施策より、関連会社の「真面目」な取り組み姿勢こそ、復興の原点に相違あるまい。
(00/10/04 わたなべあさお)
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